時事マラソン

世の中の動きに対するアンテナを高く保つ

稲盛和夫氏、独自の「アメーバ経営」 JALやKDDIで結実

京セラ創業者の稲盛和夫氏が24日、老衰のため亡くなりました。90歳でした。

 

鹿児島市出身で、会社員を経て1959年に京都セラミック(現在の京セラ)を創業。京セラの事業領域は電子部品、太陽電池事務機器などに広がり、連結売上高は2兆円に迫る大企業を作り上げました。このあたりは序の口というところが稲盛さんのすごいところで、1984年には第二電電の準備会社を設立。NTTが独占する市外電話や携帯電話などの事業に割って入り、2000年にKDDIを発足。NTTに次ぐ総合通信会社を作り上げました。


さらには、稲盛氏の生涯を貫くキーワードとして挙げられるのが「権威への反骨」で、自民党も好きではなく、「日本をよくするには政権交代が可能な国にすることが必要」との思いから、旧民主党を支援。その民主党所属で旧知の前原国土交通省からJALの再建を託され、2回断ったものの3回目で引き受け、2010年1月に経営破綻した会社を見事再建させました。


そこで持ち込まれたのが、「稲盛スペシャル」ともいうべき「アメーバ経営」。組織をアメーバのように小集団に分け、採算管理を徹底するこの手法をJALにも導入。「JALフィロソフィ」も発表し、経営や仕事に対する考え方を改革し、11年3月に更生手続きを終了、12年9月には再上場を果たしました。


アメーバ経営JALのような大企業だけではなく、稲盛氏自身が経営哲学を伝える「盛和塾」や多くの著作を通して、国内外の経営者に影響を与えました。20年以上前に私がサラリーマンをしていた時に、熊本の材木屋の社長が「うちはアメーバ経営をやってる」と言っていたのを今でも思い出します。組織を小集団に分けるということは、リーダーもそれだけ多くなる。小集団なので、ひとりひとりの役割が非常に重要になる。採算管理も徹底するので、責任も増す。どうやっても、主体的にやらざるを得なくなる。

 

今の自分の仕事は、ひとりでやっているので、アメーバ1つしかありませんが:ニヤ:、主宰するNPO法人などは、やりたい人にどんどんやってもらい、自分はゴールキーパーとしてゴールだけ守っている。稲盛さんのアメーバ経営は大好きな考え方で、常に意識しています。


記事にもありますが、昭和のカリスマ経営者が松下幸之助さんなら、平成のカリスマは間違いなく稲盛和夫さんです。


心からご冥福をお祈りしたいと思います。

 

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DMG森精機、創業地・奈良「技の総本山」

今関西では、奈良がアツいです。


工作機械世界最大手のDMG森精機が、創業地である奈良県で拠点の拡充や新設を進めています。このほど奈良市内の開発拠点を本格稼働し、ロボットや自動搬送装置などと組み合わせて複数工程を集約する技術開発を加速。グループ企業の工場なども2025年にかけて整備し、900人程度を雇用する方針です。


現在同社は、名古屋市から本社を同拠点に移し、東京都江東区との2本社制をとっており、総務や経理などの人材も奈良で働いています。森社長自身も高校まで奈良県で過ごし、登記上の本社所在地は奈良県大和郡山市に残すなど、奈良への思い入れは格別です。


DMG奈良県内に設けるのは、本社機能や開発拠点だけではありません。大和郡山市にある奈良事業所は、自動化など顧客ごとのソリューションを作り上げ、調整・検証する拠点として25年をめどに再整備する予定。工作機械をロボットなど周辺機器と組み合わせた工程集約に向けた自動化などの拠点が集まる奈良は、「エンジニアの総本山」(森社長)という役割を担います。


DMG森精機の「奈良回帰」。新拠点による人材交流などに、地元の期待はいやがおうにも膨らみます。開発センタの立地はJR奈良駅から100メートルも離れていない好立地。大阪や京都からも近いです。JR奈良駅から南へ1.8キロメートル離れたエリアでは、JR関西本線の新駅設置や京奈和自動車道(大和北道路)奈良インターチェンジの整備の計画があります。県内で唯一、ICと新駅が近接する交通結節点です。「おおむね10年後」の開業を目指す新駅を中心に、人工知能(AI)などを活用する企業などを誘致する計画で、その中心を同社が担うのは間違いありません。


同社は大学との連携も進めていて、今春、女子大学としては初の工学部を開設した奈良女子大学と連携協定を結び、拠点内に学生のための実習エリアを設けるなど、人材育成にも抜かりがありません。


人材育成というと、今年のショパン国際ピアノコンクールで2位になった気鋭のピアニスト、反田恭平氏と共同で、音楽家の活躍の場創出を目的とする新会社も設立。奈良県を拠点にオーケストラの公演や音源作成・配信などの事業を展開するなど、企業メセナもしっかり押さえています。


今後の奈良とDMG森精機には大きな期待がかかります。

 

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TICAD、対中国の舞台 岸田首相「成長の質」協調

チュニジアの首都チュニスで27、28両日に開催したアフリカ開発会議(TICAD8)が終了、日本が中国へ対抗する舞台となりました。

 

岸田首相が表明した支援額は3年間で官民あわせて300億ドルと、中国が21年の中国・アフリカ協力フォーラムで示した400億ドルを下回りました。資金力にものをいわせて援助攻勢をかける中国に対し、日本は人材教育や財政状況に目配りする「持続可能な成長」を強調しました。


日本はTICADを他国に先駆けて1993年に始めたアフリカ開発の老舗で、今回が通算8回目の会合。一時は世界最大のアフリカ援助国でしたが、中国が2000年に、中国・アフリカ協力フォーラムをスタート。今や日本の役割は中国の陰に隠れています。


今回の会議ですが、支持率低迷の打開策として、自身も得意という外交でのアピールを目論んだ岸田首相がコロナに感染。オンライン参加となりました。そのかわりに、林外相を首相特使に任命し、岸田首相と協力しながら各国との「マラソン会談」に臨んだものの、アフリカ諸国は代表団トップを首脳級から格下げした国も多く、参加48か国のうち、首脳級の出席は前回の19年の横浜会議の42人の半分に満たない20人にとどまるなど、TICAD自体の尻すぼみ感が拭えません。


ただ、日本の34社・団体が脱炭素やインフラなどで協力する92本の覚書をアフリカ側と交わすなど、日本の得意分野での開発協力が進んでいくとすれば、これはこれでとてもいいことだと思います。グロスで何億ドルをドーンというよりも、ひとつひとつのプロジェクトをコツコツ積み上げていく方が、お互いに信頼関係を築くにはいいと思います。量より質です。

 

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日本電産、「ポスト永守」リスク増す 関社長が退社へ

えーっつ?という気持ちと、やっぱり…という気持ちの半々でした。


日本電産の社長兼最高執行責任者(COO)である関潤氏の退任方針が25日、明らかになりました。日産自動車で副COOを務めていた関氏が20年1月に入社。4月からは社長になり、「即断即決、トップダウン、人格、どれをとってもCEOの後継者にふさわしい」と、21年に永守会長からCEOを任されました。


しかし、業績と株価が低迷すると永守氏の関氏への評価が変わりました。21年6月に12000円だった株価は22年4月には8000円台に落ち込みました。さらには、22年3月期の決算で連結純利益が過去最高を更新したものの、関氏が担当する車載事業が営業赤字となり、22年4月からはCEOからCOOへの事実上の降格となりました。


6月の時点では、関氏は「逃げる気は全くない」とファイティングポーズをとり、永守氏も「逃げない限りはCEOの後継者として育てる」としていましたが、22年4月~6月期に車載事業が四半期ベースで2期連続営業赤字に。ひょっとしたら、ラストチャンスは与えるが、4~6月期の営業黒字は必達と厳命していたのかもしれません。


永守会長はまもなく78歳になりますが、過去に社外からヘッドハンティングをして自身の後継候補としてきました。カルソニックカンセイ元社長の呉氏、元シャープ社長の片山氏、元日産の吉本氏、そして今回の関氏も落第となってしまいました。


記事の中で気になる点としては、企業統治指針(コーポレートガバナンスコード)では、後継者の計画は社外取締役を中心に指名委員会を設置して助言を得るべきだとしていますが、日本電産には指名委員会を設けていないようです。「自分の後継者は自分で決める」ということなんでしょうか。

 

私は株主でもありませんし、部外者がいろいろ言うべきではないのかもしれませんが、日本を代表する経営者でも自分の後継者を選ぶのは本当に難しい、気になる事案であることは間違いないです。

 

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公明党、反撃能力は「日本へ攻撃後」抑止力強化に懸念

国の安全保障戦略の改定に向け、動き出しています。日米同盟で攻撃能力はほぼアメリカに依存してきましたが、他国がアメリカの軍事的な介入意欲が低いと思い込めば、日本を安心して攻撃できる状況が生まれます。それでは困るということで、政権与党の間で制度設計を詰めています。


まず政府は「相手が武力攻撃に着手した時で、現実の被害の発生を待たなければならないものではない」との見解を提示しています。相手の攻撃準備が分かれば、相手が攻撃する前に叩いてもいいということです。自民党は「相手側に明確な意図があり攻撃に着手している状況なら、それを脅威と政府が判断する」ということで賛成の立場です。


一方、公明党は慎重です。「ミサイルが発射されるのが前提にならざるを得ないのではないか。日本への武力攻撃開始が大前提だ」と、実際に攻撃を受けた後に反撃するものという考えのようです。これに対し、自民党内には、日本が撃たれる前に攻撃をしないといった方針を明確にすれば、相手への抑止力が弱まる恐れがあるとの指摘もあり、なかなか難しいです。


さらには、反撃・攻撃する対象の協議事項となっていて、ミサイル基地だけでなく、相手の指揮統制機能も含むべき、いやもっと広げてミサイルの発射拠点や保管庫も対象にすべき?など意見はさまざまです。


反撃対象の範囲までは何とも言えませんが、個人的には攻撃されるのはできるものならやられる前に叩いてほしい。しかし、記事にもあるように相手の発射前に武力攻撃に着手したと判断できるのか、分かるもんだろうかとは思います。発射拠点を分かりにくくする技術も開発されると思います。じゃあ、攻撃を受けた後に…では、確かにやられないとやりかえせないでは抑止力は弱まる。このあたりは、もう少し議論のゆくえを見守りたいと思います。

 

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共通テスト、12月に前倒し実施を

日本私立大学連盟(私大連)会長を務める田中愛治早稲田大総長が、大学入学共通テストの実施時期を12月に前倒しして、私立大が利用しやすくすべきだと提言しているという記事を取り上げます。


なぜかというと、文系と理系の融合にまずは入試を対応させたいという考えからです。
国立大では文系なら理系科目、理系なら文系科目は若干力を抜いてもいいよ、となる。でも私立大の場合は力を抜くのではなく全くやらない。しかし、私立大の文系学部が理系科目の問題を、理系学部が文系科目を出題するのは大変。それなら大学入学共通テストを使えばいいと。1次試験は「共通テスト」を利用して幅広く基礎学力を見たうえで、2次試験は大学独自の「個別試験」で本当に欲しい学生を丁寧に選んだらいいのではと、田中会長は言います。


ここで問題になってくるのが、共通テストの実施時期です。実施が1月中旬では、大学に志望者の成績が届くのは早くて2/7あたり。入試時期が早い関西の大学は終わっています。関東でも多くが2月初旬から始めるので、共通テストを1次試験に使うのは不可能です。しかし、11月下旬か12月に共通テストを行えば、1月半ばに結果が出るので、私立大も十分に1次試験として使えると。共通テストならどの科目も自由に課せられるため、それが文理融合、文理の壁を崩すのに役に立つというのが田中会長のロジックです。


ここまで読んで、来年からでもやったら?と、とてもいいアイディアだと思いました。記事に、アメリカの例が紹介されていますが、共通テストで基礎学力が問題ないことが分かれば、大学独自の個別試験では、個々の特性や過去の活動実績、面談、プレゼン、小論文など、知識を問う筆記試験ではない、スクールカラーを反映させた選抜方法を問うのも一考です。


前倒し実現の障害として「授業が終わらない、秋は学校行事で忙しい」との理由で高校が反対しているようですが、田中会長が最後に書かれている通り、高校側の本音はこれまでの慣習や現状を変えたくないからだと思うので、そこは文科省がリーダーシップをとるべきところだと思います。

 

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中国・太陽光メーカー、投資競争過熱 原発340基分新設

これほどまでになっているんだと大変驚きました。中国の太陽光発電メーカー各社が増産投資を競っています。カーボンニュートラル(温暖化ガスの排出実質ゼロ)を宣言した中国・国内外の需要増に加え、これまではコスト競争力に優れるp型のセルが主流だったのが、発電効率の高いn型が低価格で供給できるようになったことも大きいようです。


以前は、日本のメーカーも太陽光発電パネルを製造していましたが、今では見る影もなく、世界の生産シェアの何と8割超を中国メーカーが占めます。8割とはすごいです。その源泉は、規模を重視した投資と生産量です。現在、世界の太陽光発電の新設量は、原子力発電所340基新設するのに等しい規模にのぼるというのですから、これまた驚きです。しかも、この340基は「年単位」だと。この数量、すなわち新設分だけで21年の発電能力を超えるというのですから、桁違いの生産量です。


中国企業の激しい投資競争は、供給増を通じて太陽光パネルの価格を世界的に押し下げます。太陽光発電は、長期的な需要増は確実だとはいえ、激しい投資競争は各社の体力を消耗させます。日本のように、経営難の業界や企業に補助金などを出して、ゾンビ企業を創出するようなことを中国はしません。特にこの分野での値下げ圧力は、経済面での米中対立で、習近平指導部を側面支援する可能性も指摘されます。アメリカは、国内への投資回帰を促すため、中国製の太陽光パネルの輸入はゼロにしています。このままなら、おそらくコストの高いパネルをアメリカ国内で消費者は使い続けることになります。基本的に、太陽光発電装置産業で、つくればつくるほど安くなります。ますます中国産は安くなっていくでしょう。


勝ち残らないと生き残れない。当然、イノベーションやコストダウンに各社とも必死になります。いい悪いは別にして、中国の破壊力をまざまざと見せつけられます。

 

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ラトビア外相、中国の経済枠組みから脱退

5段ほどの小さい記事ですが、目を引きました。バルト3国の一角であるラトビアが先日、中東欧など16か国と中国でつくる「16+1」から、隣国のエストニアと共に脱退をすることを表明しました。


「16+1」は、中国の「一帯一路」構想の欧州への足掛かりとして2012年に発足し、最も多い時には欧州17か国が参加しましたが、21年にラトビアの南隣のリトアニアが脱退し、台湾との関係を強化しました。脱退の背景としては、中国からの投資が欧州側の期待通りではなかったことがひとつ。

 

もうひとつは、ラトビアのリンケービッチ外相が話しているように、ロシアのウクライナ侵攻が脱退判断に影響しているようです。国連の常任理事国である中国がロシアを非難しないことを問題視し、「物事の見方が違うのは明らかだ」とも述べており、今後の対中関係は「民主主義や人権などの原則に基づく」ものになるとしています。


今回の脱退で、ラトビアなどが中国との関係をどの程度見直すかはよく分かりません。「16+1」からは脱退しつつも、個別では付き合っていくかもしれません。西側の経済枠組みの方を優先するとも言っていますが、どこの何とどの程度なのかも分かりません。
今朝の日経朝刊の1面にもある通り、民主主義国と権威主義国の分断がさらに進んでいます。

 

その中で、中国やロシアなど権威主義国の勢いが増し、民主主義国は押され気味という論調をよく見ますが、自分たちが民主主義国の一員だから言うわけではありませんが、民主主義国はそれほど焦る必要はないと思います。アメリカがイラクアフガニスタンにしたように、無理やり「民主主義を輸出」しようとするとロクなことがありません。今回のバルト3国のような動きはきっとこれからもあるので、じっくり構えるのが得策だと思います。

 

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アジア開発銀行、中国への支援終了検討へ 総裁が表明

アジア開発銀行(ADB)の浅川総裁は日本経済新聞のインタビューに答え、中国への新規融資を終える検討を2023年に始めることを明らかにしました。

 

ADBは1966年に発足し、本部はフィリピンの首都マニラにあります。日本とアメリカが15.7%ずつ出資しており、歴代の総裁は日本から出していて、浅川氏の2期前の総裁は、現日銀総裁の黒田さんでした。アジアの開発途上国に支援をするのがADBのミッションなのに、世界2位の経済大国になった中国に融資をしているの?と首をかしげる人もいるかと思います。


浅川総裁は「(中国が)ADBから卒業できる状況かどうか来年から議論したい」と述べていて、25年を最後に融資をやめるかどうか、23年から検討するようです。


ADBは融資の対象となる基準を主に3つ示しています。①1人当たり国民総所得(GNI)が7455ドル以下、②国際資本市場での資金調達が困難、③社会保障など開発水準を示す指標が一定以下といった国に絞っています。中国は、①GNIと②資金調達ですでに基準を外れており、③開発水準の指標が適合しているかを検証することになりそうです。


ADBから中国への融資残高は、196億ドルとインドに次ぐ2位で全体の14%を占める融資先である一方、日米に次ぐ3位の出資者でもあります。ADBの浅川総裁は「社会保障などの状況は上海と内陸部で違う。きっちり議論したい」と話しているものの、借りてもいるのに、貸しもしている。これは何だかおかしいです。借り手の立場も貸し手の立場も両方使いながら、国際機関での影響力を増すべく利用しているとも見えます。

 

アジアインフラ投資銀行(AIIB)も主導しており、もはや支援を受ける立場ではないとの見方があるのは当然です。中国が借り手でなくなれば、ADBはその分を低所得国の支援に注力しやすくなりますし、これはもう中国には「卒業」して頂きましょう。

 

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米共和チェイニー氏、予備選大敗 反トランプは苦境鮮明

11月の米中間選挙での西部ワイオミング州共和党候補を決める16日の予備選で、現職のリズ・チェイニー下院議員が大敗を喫しました。チェイニー氏は56歳。ブッシュ政権の副大統領としてイラク戦争を主導するなど絶大な影響力を持ち、「史上最強の副大統領」と言われたディック・チェイニー氏の長女。2016年に初当選し、19年には早くも下院指導部に入り、ナンバー3にのぼりつめた実力者です。


同氏はトランプ前大統領を真っ向から批判していましたが、トランプ氏が支持する「刺客」候補にあえなく敗れたのは意外でした。それも、2020年の予備選では7割を超える得票率で圧勝した実績がある「チェイニー王国」で、今回は得票率が30%にも届かず敗北。ライバル候補の弁護士ヘイグマン氏は、トランプ氏の支持を受け、得票率66%とチェイニー氏を大幅に上回り、共和党内の反トランプ派の苦境があらわになりました。


転機は、2021年1月に起きた議会占拠事件。チェイニー氏はトランプ氏の責任を負うためにライバルの民主党主導でまとめた弾劾決議に賛成しました。トランプ氏への批判を緩めないチェイニー氏は党内で孤立を深めていき、21年5月には指導部の要職から追われ、今年2月には共和党全国委員会からチェイニー氏らに対する非難決議を採択されてしまいました。


今回の選挙結果により、議会占拠事件の弾劾決議に賛成した共和党議員はチェイニー氏を含めて10人いましたが、11月の本戦にすすめたのはわずか2人とは驚きです。チェイニー氏を含めた4人は敗北、残りの4人はトランプ氏の支持なしには勝算が乏しいとの判断からか出馬を見送りました。


だからといって、トランプ氏の支持を受けて過激な主張をしたら、本戦で民主党候補に勝てるとは限りません。トランプ氏がスキャンダルなどで政治的影響力を失った場合、共倒れになる可能性もあります。


秋の中間選挙は、与党民主党の苦戦が予想されていますが、共和党も万全ではありません。良くも悪くも「トランプ氏次第」といえます。バイデン大統領からすると、わずかに逆風が弱まったかな…と感じているかもしれません。

 

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「いつも通りやなあ」 大阪桐蔭、王者の強さ詰まった好走塁

昨日、今夏初めて甲子園に行き、大会第11日、3回戦の第4試合、大阪桐蔭vs二松学舎大付の試合を観戦してきました。


史上初の3度目の春夏連覇を狙う大阪桐蔭高校は、初戦の旭川大高戦は苦戦しましたが6-3で勝利。2回戦の聖望学園戦は19-0と大勝し、昨日の3回戦でした。結果は、序盤に効率よくあげた4点を、エースの川原投手が粘りのピッチングで0点に抑え、見事完封勝利。順当にベスト8進出を果たしました。


初戦こそ苦労したものの、持ち前の打力でひっくり返し、2戦目は25安打の猛打を披露。投手陣も安定感が際立ち、どのチームよりも余力を残して準々決勝に勝ち上がった感があります。そんな大阪桐蔭高校を「大阪桐蔭、強すぎ問題」なる記事も目にするようになりました。まあこの類の記事は、何年かに1回、強いチームが出てきたら揚がるアドバルーンみたいなものですが、大阪桐蔭はどこのチームよりも、しっかり野球をやっている、そんな印象です。

 

そのひとつが、この記事なる「一打二進」。代表的なシーンが3―0とリードして迎えた四回にありました。1死から1番の伊藤選手が直球をはじき返しました。打球は転々と左中間に転がり、レフトが捕球動作に入るやいなや、伊藤選手は一塁ベースを猛然と駆け抜け、すかさず二塁を狙いました。深く守っていたとはいえ、決してセンターとレフトの間を抜けたわけではありません。相手は伊藤の走塁を見て焦りもあり、打球をはじいてしまう。伊藤選手はそれを確認すると、ヘッドスライディングで一気に三塁を陥れました。


「『一打二進』が常に頭にあり、練習の中で繰り返している。三塁進塁は結果的にそうなっただけ」と伊藤選手は言います。ひとつのヒットで、二つ先の塁を狙う。この進塁を成功させたのは、普段から、隙があって進塁できなければチームメイトから厳しい指摘が飛ぶ、練習環境からくる高い走塁意識のたまものです。


こういった、走塁の意識は随所で見られました。普通のフライを打ち上げても、野手がキャッチした時には、もう二塁ベースを駆け抜けているというシーンが何度も見られます。


「日ごろから徹底していることなんで、いつも通り」だそうです。

 

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プロ野球、コロナの時代の球団経営 球場の有無で明暗

新型コロナウイルスによる入場規制が3年ぶりに撤廃された今季、観客動員は史上最高を記録した2019年の8割近い水準まで回復してきましたが、2年間のコロナ禍は球団経営にどれほどの打撃をもたらしたのか。各球団の決算公告を参考に、振り返った記事を取り上げます。


巨額のテレビ放映権などで稼ぐ欧米のプロスポーツに比べ、プロ野球の収入はチケットや球場での飲食、物販など球場周りでの売り上げが中心になっています。無観客試合や入場規制をもたらしたコロナはその根幹を直撃。ただ、そのダメージは球団の運営形態によって差があるのが、なかなか興味深いです。


自社で球場を保有するソフトバンクは19年シーズンに球界で最大の324億円の売り上げがありましたが、過去2年は230億円前後に減少。5億円程度の黒字で推移していた最終損益は80億円近い赤字に転じ、過去の利益の蓄積も吹き飛びました。


対照的なのが神宮や札幌ドームを〝間借り〟しているヤクルトや日本ハムです。球場での飲食代や広告費などが入らず経営規模は小さいが、〝持ち家〟がない分、傷も浅かった。球団と球場の一体運営はプロ野球ビジネスを成功させるカギとされてきました。近年、多くの球団は球場を自前化したり、指定管理者になったりして、球場周りでの収益強化を図ってきましたが、コロナ下ではそんな球団ほどダメージを被ることになったのは皮肉な話です。


プロ野球球団だけでなく、一般企業も「持たざる経営」はやっぱり不況には強いです。これはひとつのセオリーとしてはあると思います。企業だけでなく個人もそうかもしれません。将来がなかなか見通しにくいのに、30年を超えるローンを組んで持ち家を買うのが果たして合理的なのかどうか。考えどころだと思います。


プロ野球球団ですが、ヤクルトは神宮球場大学野球と一緒に使っています。自前の球場を持ちたいと思わないのかなあと思いますが、不況に強いところをみるとこれが解のひとつだと思えます。一方、日本ハムは来年から自前の新球場に移転します。これもまたひとつのチャレンジです。短期的に見るだけでなく、長期的な視点も球団経営には必要になってきそうです。 

 

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大学入試、偏差値時代終幕の足音 推薦・総合型が過半に

受験地獄といわれた入試環境が18歳人口の減少で激変し、偏差値で大学が序列化される時代が終わろうとしています。


年明けの一般入試を待たずに、年内入試で合格を決める、「推薦・総合型」が受験生の半分を占めるようになってきました。推薦型とは、大学の付属・系列校や指定校推薦を指し、付属校の新設や系列校化も年々進み、囲い込みを進めています。以前はAO入試でしたが、昨年から呼び方が変わった総合型とは、面接や小論文、プレゼン、検定試験の結果などで選考するもので、推薦型による入学者も合わせると、2000年度は全体の33.1%だったのが、2021年度は50.3%と初めて半数を超えました。私立に限ると、20ポイント増の約6割に達します。


受験生も一発勝負の一般入試より、早めに合格できる年内入試を選ぶのは当然の流れです。一般入試で複数校を受けるより推薦1校で決まれば、受験費用も安く済みます。1点刻みの選抜が権威を持つ時代の終わりを歓迎すべきだという意見が記事にありますが、私も同じ考えです。予備校などに相当額のお金を払って、時間も心もすり減らす一般入試を受ける子がひとりでも減ったらいいと思っています。


総合型の受験生が増えると丁寧な選考ができなくなり、学力不足の学生が増えたという課題も書かれていますが、それは入学後に大学が簡単に単位を与えないようにすればいいだけだと思います。あとは、一般入試よりも緩くふるいにかけて入学してきた学生をどう育てるかが大学は問われます。入学者をたくさん欲しいからと、学力不足の生徒もたくさん取り、入学してからたいした指導もせずほったらかしでは困ります。入学後の指導が重要になってきます。

 

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行政DX 加速へ再起動 内閣改造、デジタル相に河野太郎氏

岸田首相は10日の内閣改造でデジタル相に河野太郎氏を起用しました。経済安全保障相には高市早苗氏が就き、2021年9月の自民党総裁選を首相と争った両氏が力を注いできた分野の閣僚に据えた人事は、次の総裁選出馬に向け、切磋琢磨してほしいふたりです。


特に、河野太郎氏は昨年の自民党総裁選で、第1回目の投票では岸田氏に1票差の2位に。惜しくも決選投票では敗れましたが、岸田首相の次の候補の一番手と言っていい存在です。


そこで、ぜひ今回のデジタル相で実績を作ってアピールしたいところです。一番の課題は「行政のデジタル化」です。政府と自治体のシステム基盤となる「ガバメントクラウド」整備、行政デジタル化を阻むアナログ規制の見直しなどが一斉に具体化の段階に入ります。税や住民基本台帳など主要20業務を対象に、仕事の進め方や仕様を統一し、バラバラだった行政システムを政府のクラウドに移行するという一大事業です。2025年度までの移行でシステム費用を3割削減する目標を掲げるが、思うように進んでいないようです。


小規模自治体からは「かえってコストが増える」との懸念も漏れています。国と自治体のコストの負担割合など、財源も絡む議論は23年にかけて本格化が見込まれ、自治体や財務省との難しい交渉の指揮を河野氏が担います。河野氏の実力が試される絶好の機会です。


マイナンバーの利用促進なども含めて、デジタル関連の改革は、私たち国民の目が届きやすい分野です。うまくいかなければそれまでですが、うまくいけば「河野首相待望論」が世論から出てくる。そうなると、国会議員先生たちも「いっちょやらせてみるか」となる。


できることを、手当たり次第にやってほしいと思います!

 

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改造内閣は改革の具体化と実行を急げ

第2次岸田改造内閣が10日に始動しました。経験や専門性を重視した手堅い布陣といえると社説にはあります。個人的には、わりといい印象を持っています。


相変わらず若い人は少ないし、女性もふたりしかいない。先日「入閣待機組」について触れましたが、100歩譲って年功序列でも致し方なしとするなら、留任はなしにして全員を初入閣にすれば新陳代謝が進みますが、入閣待機組は8人のみ。主要閣僚は留任が多いし、3度目の登板という人もいます。


「今は緊急時、国難時だから致し方なし」というと、「それなら国難でない、ゆるりとした時期なんていつあるの?」と言いたい。いつもそれなりに課題は多く、大変な時期なんだから、時期を言っていたら変化のしようがないので、思い立った時期に若手をドンと登用するとか、女性閣僚を10人くらいにするとか、やればいいんです。


とはいえ。さすがに今の時期。コロナや物価高、さらには台湾有事を考えると、あまり冒険はできないなという気持ちもよく分かります。第4派閥の長である岸田首相としては、全派閥に配慮して余計な軋轢を生むリスクを軽減したいのも当然でしょう。


コロナ対応については、経験豊富な加藤勝信氏が厚生労働相に。対中強硬派の高市早苗氏の経済安全保障相も重しが効きそうですし、台湾有事のシュミレーションに積極的に関わっていた浜田靖一氏の防衛大臣もいいと思います。さらに、デジタル相も河野太郎氏が適任です。どんどん進めてもらいたいです。


防衛力の抜本的な強化が、年末に向けた最重要課題のひとつと岸田首相は言われているので、まずはここで成果を見せて欲しいです。

 

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