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米共和チェイニー氏、予備選大敗 反トランプは苦境鮮明

11月の米中間選挙での西部ワイオミング州共和党候補を決める16日の予備選で、現職のリズ・チェイニー下院議員が大敗を喫しました。チェイニー氏は56歳。ブッシュ政権の副大統領としてイラク戦争を主導するなど絶大な影響力を持ち、「史上最強の副大統領」と言われたディック・チェイニー氏の長女。2016年に初当選し、19年には早くも下院指導部に入り、ナンバー3にのぼりつめた実力者です。


同氏はトランプ前大統領を真っ向から批判していましたが、トランプ氏が支持する「刺客」候補にあえなく敗れたのは意外でした。それも、2020年の予備選では7割を超える得票率で圧勝した実績がある「チェイニー王国」で、今回は得票率が30%にも届かず敗北。ライバル候補の弁護士ヘイグマン氏は、トランプ氏の支持を受け、得票率66%とチェイニー氏を大幅に上回り、共和党内の反トランプ派の苦境があらわになりました。


転機は、2021年1月に起きた議会占拠事件。チェイニー氏はトランプ氏の責任を負うためにライバルの民主党主導でまとめた弾劾決議に賛成しました。トランプ氏への批判を緩めないチェイニー氏は党内で孤立を深めていき、21年5月には指導部の要職から追われ、今年2月には共和党全国委員会からチェイニー氏らに対する非難決議を採択されてしまいました。


今回の選挙結果により、議会占拠事件の弾劾決議に賛成した共和党議員はチェイニー氏を含めて10人いましたが、11月の本戦にすすめたのはわずか2人とは驚きです。チェイニー氏を含めた4人は敗北、残りの4人はトランプ氏の支持なしには勝算が乏しいとの判断からか出馬を見送りました。


だからといって、トランプ氏の支持を受けて過激な主張をしたら、本戦で民主党候補に勝てるとは限りません。トランプ氏がスキャンダルなどで政治的影響力を失った場合、共倒れになる可能性もあります。


秋の中間選挙は、与党民主党の苦戦が予想されていますが、共和党も万全ではありません。良くも悪くも「トランプ氏次第」といえます。バイデン大統領からすると、わずかに逆風が弱まったかな…と感じているかもしれません。

 

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