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プロ野球、コロナの時代の球団経営 球場の有無で明暗

新型コロナウイルスによる入場規制が3年ぶりに撤廃された今季、観客動員は史上最高を記録した2019年の8割近い水準まで回復してきましたが、2年間のコロナ禍は球団経営にどれほどの打撃をもたらしたのか。各球団の決算公告を参考に、振り返った記事を取り上げます。


巨額のテレビ放映権などで稼ぐ欧米のプロスポーツに比べ、プロ野球の収入はチケットや球場での飲食、物販など球場周りでの売り上げが中心になっています。無観客試合や入場規制をもたらしたコロナはその根幹を直撃。ただ、そのダメージは球団の運営形態によって差があるのが、なかなか興味深いです。


自社で球場を保有するソフトバンクは19年シーズンに球界で最大の324億円の売り上げがありましたが、過去2年は230億円前後に減少。5億円程度の黒字で推移していた最終損益は80億円近い赤字に転じ、過去の利益の蓄積も吹き飛びました。


対照的なのが神宮や札幌ドームを〝間借り〟しているヤクルトや日本ハムです。球場での飲食代や広告費などが入らず経営規模は小さいが、〝持ち家〟がない分、傷も浅かった。球団と球場の一体運営はプロ野球ビジネスを成功させるカギとされてきました。近年、多くの球団は球場を自前化したり、指定管理者になったりして、球場周りでの収益強化を図ってきましたが、コロナ下ではそんな球団ほどダメージを被ることになったのは皮肉な話です。


プロ野球球団だけでなく、一般企業も「持たざる経営」はやっぱり不況には強いです。これはひとつのセオリーとしてはあると思います。企業だけでなく個人もそうかもしれません。将来がなかなか見通しにくいのに、30年を超えるローンを組んで持ち家を買うのが果たして合理的なのかどうか。考えどころだと思います。


プロ野球球団ですが、ヤクルトは神宮球場大学野球と一緒に使っています。自前の球場を持ちたいと思わないのかなあと思いますが、不況に強いところをみるとこれが解のひとつだと思えます。一方、日本ハムは来年から自前の新球場に移転します。これもまたひとつのチャレンジです。短期的に見るだけでなく、長期的な視点も球団経営には必要になってきそうです。 

 

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