2023年も残り1週間。各紙に新年の展望記事が見られるようになりました。
今日の日経朝刊1面の『展望2024』は国際情勢、ウクライナについて書かれています。
先週も取り上げましたが、ロシアへの反攻がなかなか思うように進まず、ウクライナをめぐる戦況は大変厳しいです。「世界の関心が中東情勢に移り、ソ円の焦点がウクライナ以外にそれてしまった」と無念そうにつぶやく、ゼレンスキー大統領の気持ちはいかばかりか。
そんなゼレンスキー氏にはロシアとの妥協を促す声が米国内から聞こえてきます。米政府のウクライナ支援予算が枯渇寸前なのは先週取り上げたとおりです。トランプ前大統領に近いバンス米上院議員は12月上旬に、ウクライナが領土割譲に応じるのが「米国の最善の利益だ」と言い放ちました。トランプ氏もロシアとの「ディール」に関心があると伝えられています。そんなトランプ氏は、共和党の候補者指名争いで断トツトップです。
しかし、西側諸国は1930年代当時の大失敗を改めて思い起こす時だと記事にはあります。1938年、チェンバレン英首相らはナチスドイツに甘い態度をとり、チェコスロバキアの一部割譲を認めてしまいます。足元を見透かしたドイツは翌年、ポーランドに侵攻し、第2次世界大戦がはじまりました。
世界は今似たような状況にあり、ウクライナの一部領土をロシアに譲ったら、悪影響は欧州だけではすみません。力ずくで領土を奪っても構わない風潮が世界に蔓延します。ただでさえ、隣国の中国は「やったもの勝ち」的なふるまいを隠そうとしません。さらにエスカレートをすると、台湾侵攻はもちろん、東シナ海、尖閣諸島など、アジアでより強気な行動に走るでしょう。
もしトランプ氏が再び米政権に返り咲いた場合、どう米国と連携をとっていくのか。考えただけで恐ろしいですが、怖いもの見たさも正直あります。