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アルゼンチン大統領にミレイ氏 右派政権、米と関係改善へ

南米アルゼンチンの次期大統領に右派のハビエル・ミレイ下院議員が決まりました。

ミレイ氏は53歳、自由市場主義(リバタリアニズム)を信奉している経済学者で、選挙活動では「自由万歳、この野郎」を決まり文句にしてきました。さすがリバタリアン、飼い犬にミルトン・フリードマンという名前を付けているところまでは理解できますが、何でも初代のペットが亡くなったのでクローンで作った5匹の犬とテレパシーで対話しながら、政策のアイディアを得ているらしく、相当の変わりものです。よく比較されるトランプさんの方が、まともに見えるところが恐ろしいです(笑)

「状況は危機的だ。段階的に進めていく余裕はない」。ミレイ氏は19日夜、ブエノスアイレス市内のホテルで支持者を前に演説。早急に改革へ取り組む姿勢を強調しました。景気低迷や干ばつ、通貨安、インフレは待ったなしです。10月の消費者物価指数は142.7%の上昇、国民の約4割が貧困にあえぎます。ミレイ氏の得票率は約56%。対抗のマサ氏の約44%とは、予想以上に差が開きました。それだけ、「とにかく何とかしてほしい」という国民の切実な思いが伝わってきます。

ミレイ氏の大規模な改革の代表例が「中銀の廃止」と「経済のドル化」です。当初はペソとドルを併用しながら、徐々にドルに一本化することを想定しているようです。中南米ではエクアドルエルサルバドルなどが法定通貨に米ドルを採用していますが、アルゼンチンの経済規模はエクアドルの5倍以上です。中銀も廃止すれば、通貨切り下げなどの金融政策もできません。大きなリスクを伴います。

外交面も大きな転換点を迎えます。現在の左派政権は中国との関係を重視してきましたが、「共産主義者とは手を組まない」と発言しています。中国の一帯一路構想も入ったばかりのBRICSも脱退することになりそうです。一方、アメリカとの関係改善に動く見通しで、「就任前に、まずはアメリカに、次にイスラエルにいく」と明言したようです。

ミレイ氏の政策はどれもが強烈ですが、今のアルゼンチンの苦境を何とかしたいという思いがミレイ氏からも伝わってきます。今やっていることが何もかもうまくいっていないので、大きく変えて欲しいという国民の気持ちもよく分かります。

ミレイ氏は若かりし頃、プロサッカーチームのユースに所属し、将来を嘱望された時期があったそうです。ポジションはゴールキーパー。これは応援にも力が入ります(笑)自制心が試されるゴールキーパー経験者なので、攻撃一辺倒な性格ではないと思います。表向きは攻撃的、威圧的な態度を見せながら、守りのことも考えている指導者だったらいいなと願います。

 

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