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藤井聡太vs永瀬拓矢に運命を感じた 師匠・杉本昌隆八段が見た八冠達成

第71期将棋王座戦で、藤井聡太七冠が永瀬拓矢王座を3勝1敗で破り、王座のタイトルを奪取。藤井新王座は将棋界にある8つのタイトルすべてを同時に制覇する史上初の偉業を成し遂げました。

これまでもタイトル独占はありました。1957年に升田幸三さんが三冠、弟弟子の大山康晴さんが三冠達成、その後タイトル戦の数が増えるとともに四冠、五冠と独占。そして、1996年に羽生善治さんが全七冠独占を果たします。前年に一度は谷川浩司十七世名人に阻まれての劇的な達成でしたが、七冠は約半年間に終わり、タイトルは保持し続けたものの、再び七冠を独占することはありませんでした。

藤井さんの変わらぬ高勝率、これまでのタイトル戦は挑戦・防衛合わせ18戦で全勝。フルセットに持ち込まれたのもわずか1回。羽生さんの時代は、森内俊之九段や佐藤康光九段ら「羽生世代」と呼ばれる同世代の棋士の存在感も大きかったですが、藤井さんにそういった好敵手がいないとすら言われています。

全タイトル制覇までわずか7年というスピード、無類のタイトル戦での強さを目の当たりにするとそういわれても仕方がない気がしますが、渡辺明さんや今回の永瀬さんのような猛者を破っての八冠達成なので、「ライバル不在」には当たらないと思います。

この記事にある、藤井さんの師匠でもある杉本八段のコメントがとても印象的だったので、取り上げてみました。
特に最後の部分。
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コスパ」(コストパフォーマンス)や「タイパ」(タイムパフォーマンス)など、効率重視の言葉をよく聞く現代だが、一手に何時間も考える棋士の世界はそこから対極にある。その象徴が藤井八冠ではないだろうか。
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王座戦の持ち時間は5時間。この5時間をいかに使うかが勝負の分かれ道でもあります。基本は無駄遣いせず節約したいところですが、ここ一番には2時間を超える長考をします。ここに将棋の魅力が詰まっています。駒をどこに動かすのに2時間も考える。コスパもタイパもあったもんじゃありません。

スポーツの試合もここ最近は「時短」を余儀なくされています。今の時代、特に若者に見てもらおうと思ったら、時間が長いと見てもらえない。サッカーも前後半90分は長すぎるのでは?という議論もあるようです。時代の要請に応える部分と、ことの本質は変えない部分とはしっかり判断して分けた方がいいと思います。何でもかんでも今に合わせなくてもいいでしょう。

 

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