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ゼレンスキー大統領の米議会での演説要旨

ウクライナのゼレンスキー大統領が21日、米議会で演説をしました。日本経済新聞から演説要旨を引用します。


あらゆる見込みや悲観的なシナリオに反し、ウクライナは陥落しなかった。ウクライナは生きている。戦いは続いており、我々は戦場でこの問題を打ち負かさなければならない。この戦いはウクライナ人の生命、自由、安全のためだけでなく、我々の子供や孫がどんな世界に住むかを規定する。ウクライナを助けるための米国の努力に感謝する。何も恐れることはない。これは全世界に勇気を与えることだ。米国は自由と国際法を守るため、国際社会を団結させることに成功した。ロシアの暴君は、我々に対する支配力を失っている。


もう一つ重要なことは、ロシア人は心の中でクレムリン(大統領府)を打ち負かしたときにのみ、自由になる機会を得ることができるということだ。戦いは続いている。これは欧州や同盟国の一部の領土のためだけでなく、ウクライナや米国の民主主義のための戦いでもある。世界のどの国も、守られていると期待して戦争を無視してはならない。世界の結びつきはあまりにも強い。


私はワシントンに来る前の日、ウクライナ東部バフムトの前線にいた。ロシアの軍隊は5月からバフムトに攻撃を仕掛けてきたが、持ちこたえてきた。昨年はバフムトに7万人が住んでいたが、いまは数人の市民しかいない。ロシアはあらゆる手段を使って我々の美しい町を攻撃しようとしてくる。ロシア軍は我々よりも多くのミサイルや航空機を持っている。それでも我々は持ちこたえてきた。


ロシアの戦略はずさんだ。視界に入った全てを焼き尽くし、破壊してきた。勇敢な米国の軍隊が1944年のクリスマス、ヒトラーの軍隊と戦ったように、ウクライナ人は今年のクリスマスに戦っている。ウクライナは持ちこたえており、決して投降しない。あなた方の支援は不可欠だ。戦いに耐えるだけでなく、勝利へのターニングポイントにするためだ。


これまでの金融支援にも感謝したい。米国の資金は慈善事業でなく、私たちが最も責任ある方法で使う世界の安全と民主主義への投資なのだ。ロシアは、その気になれば、侵略を取りやめることができた。国際的な法的秩序が我々の共通の課題だ。私がバイデン米大統領と話し合って設けた(平和構築に向けた)10項目の内容は、これから数十年間、我々の共同安全保障のために実施されるべきだ。


2日後にはクリスマスを祝うが、(ウクライナに)電気はない。ロシアがミサイルでエネルギーインフラを攻撃したためだ。だが、我々は文句を言わない。だれの方が楽な生活をしているというような比較はしない。あなたが幸福でいられるのは、あなたの国の安全保障のおかげだ。独立のための闘争と、多くの勝利の結果だ。我々ウクライナ人もまた、尊厳と成功をもって、独立と自由のための戦いをやり遂げるだろう。


我々は強いウクライナをつくる準備ができている。我々には強い国民、強い軍隊、強い制度がある。ウクライナ、欧州全体、世界のために強靱(きょうじん)な安全保障を作り上げる。これは欧州と世界の民主主義を守る基礎になる。


米国民の皆さんに感謝を申し上げたい。バイデン大統領、上下両院は貴重な援助を与えてくれた。ウクライナ人を受け入れてくれたことに感謝する。ここに立ったいま、この瞬間にぴったりなフランクリン・ルーズベルト米大統領の言葉を思い出す。ウクライナ国民は絶対に勝利するだろう。ウクライナ軍は多くの部分において、世界に頼っている。バフムトでの演説中、人々が旗を渡してくれた。ウクライナ、欧州、そして世界を命がけで守る人たちの旗だ。我々は立ち上がり、戦い、そして勝つのだ。ウクライナ、米国、そして自由な世界全体が一つになっているのだから。


軍隊と市民に、神のご加護がありますように。米国を永遠に祝福してくれますように。メリークリスマス。そして勝利の新年を。


米国だけでなく世界全体に「支援疲れ」が広がる中、最大支援国の米国の議会で超党派による協力を求めたことには成果は合ったように思います。しかし、来年1月からの米連邦議会では野党の共和党が下院での主導権を握ります。ウクライナ支援に否定的な共和の保守強硬派「フリーダム・コーカス(自由議連)」の所属議員は欠席していたり、演説に拍手をしないでいる場面がみられました。共和党内に30~40人がいるといわれ、トランプ前大統領の掲げる「米国第一」に共鳴、国際協調自体に懐疑的なようです。
来年は2022年のような支援は難しくなるかもしれません。

 

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