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インドネシア次期大統領、衰えぬ野心 挑戦3度で当選 プラボウォ氏

インドネシア大統領選でプラボウォ国防相の当選が決まりました。落選側の陣営が「国家の介入があった」として憲法裁に異議を申し立てていますが、結果は変わらなさそうで、10月からプラボウォ政権がスタートします。

世界4位の約2.7億人の人口を抱え、豊富な天然資源を生かし、年率5%前後の成長を続けてきた、ASEANのエース国。2045年にはGDPで世界5位以内となり、先進国入りを目指します。その頃には、日本のGDPも抜かれていることでしょう。

経済政策は、ニッケルなどの資源輸出を制限し、国内の製造業の誘致を目指します。そして、現ジョコ政権のレガシーでもある新首都「ヌサンタラ」への移転計画も推進。さらには、プラボウォ氏自身の肝いりの政策として、幼稚園から高校までのすべての学校給食の無料化を掲げているのがユニークです。インドネシアは平均年齢が29歳と若く、対象となる学生は8000万人規模になり、年間コスト4.3兆円は国家予算の10%強に当たるというのですから、気合が要ります。

プラボウォ氏は大統領選3度目の挑戦で悲願の大統領の座を射止めました。スハルト元大統領の娘婿であり、強権的な国軍幹部。1998年にスハルト政権が崩壊すると、自身が指揮した部隊が民主活動家の誘拐などに関与し、国軍を追放。その後はヨルダンなどで事実上の亡命生活を送っていました。長い間、アメリカへの入国も禁止されていました(2020年に解除)。

一方、今回の選挙ではSNSを駆使してダンス姿を披露するなど、「愛らしいおじいちゃん」として親しみやすさも演出して人気につなげ、さらには人気のあるジョコ大統領の長男のギブラン氏を副大統領に指名したことも大きかったです。ただこれも、ギブラン氏は規定の年齢に達していなかったにもかかわらず、憲法裁判所はギブラン氏が地方首長を経験していることを理由に、出馬を認める判断をしました。その憲法裁の長官がジョコ氏の義弟だったというのは何ともまずく、ジョコ一族の影響力が民主的ルールをゆがめたと批判されています。

3度目の正直を成し遂げたプラボウォ氏ですが、昔も今もけっこう危ない橋を渡ってここまで来ています。「2つのインド」と言われるくらい、世界的にも存在感を増しつつあるインドネシア。「アジアの貧しい国」ではもはやないという自覚をもって国家運営に当たってほしいです。

 

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