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「文句があるなら代案出せ」 会議で激高「6秒」待てず

舞台は、東京都内にある大手インターネットサービス会社の会議室。

2016年6月のある日の夕方、40代の男性が部長として率いるチームの7人が定例会議に臨んでいました。上層部の指示で大幅に引き上げられた月間の売り上げ目標。どうやって達成するか。営業方針などを話し合う場でした。

途中、チームメンバーの報告に「それ意味あるの?」と、ひとりの部下が口を挟みます。報告内容はすでにチーム内で合意されていた内容で、部長は自分への当てつけだと思い、「文句があるなら代案を出せよ」と語気を強めます。対する部下は「文句なんか言ってないじゃないか」とため口で応戦。言い返した部下と部長は同い年でした。

部長は、もう後には引けない。缶コーヒーを机に叩きつけ、部下に歩み寄り、シャツを掴み、数秒後に手を離したものの、口論に発展。異変に気付いた上司が会議室の外から割って入り、部長を別室に連れ出しました。

日付が回った午前3時ごろ、グループチャットに部下が自身の不調を訴えます。首の痛みや手足のしびれを訴え、うつ病の診断を受け、1か月後に退職。20年、部長と会社を相手取って訴訟を起こし、約1.4億円の賠償を求めました。

2023年8月、東京地裁は、首付近への外力は認めたものの、労働能力に影響を与える後遺症があるとはいえず、賠償額は約218万円と命じました。一審判決後、賠償額に不満の部下側は地裁評価に誤りがあると控訴。部長側も敗訴部分の取り消しを求め、裁判は今も続いています。

双方に言い分はありますが、もし部長が「6秒」待って怒りを呑み込めていれば、そもそも争いは起きていません。トラブルはすでに7年半に及んでいます。

 

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