時事マラソン

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ドイツ、奇策「31条」発動 ウクライナをアシスト

「コーヒーでも飲んできたらどうか」。別になんてことない一言ですが、この一言がウクライナEU加盟交渉入り合意に一役買いました。

EUは、先日の14日の首脳会議でウクライナの加盟交渉入りを決めたことは、この時事マラソンでも取り上げました。2022年の申請から異例のスピードで合意にこぎつけましたが、露骨な親ロシア政策をとるハンガリーのオルバン首相が強硬に反対していて、首脳会議でも拒否権を行使する考えを示していました。

EU加盟交渉などの重要政策は、27か国すべての全会一致で決められないといけません。たどりついたのがEU条約31条「建設的棄権」です。一部の代表室が退室して採決を棄権した場合、残ったメンバーのみの賛成で全会一致が成り立つという取り決めだそうです。

会議の当日、ミシェルEU大統領マクロン仏大統領、そしてショルツ独首相は、オルバン氏を朝食会に招き「コーヒー退室」を打診したようです。この棄権案はショルツ氏が提案したとされます。そして14日の会議のさなか、ショルツ氏が「コーヒーでも」と切り出すと、オルバン氏は席を立って退出。ウクライナの交渉入りに必要な「全会一致」での合意となりました。

オルバン氏は不満たらたら…なのかと思いきやそうではなく、「他の26か国がしたいなら勝手にすればいい」と、まあまあ大人な対応を見せています。棄権なら、ロシアへのメンツも立つし、EUからの補助金の支給という「ニンジン」もあるので、EU加盟国としてあんまり無碍な対応もできないという思いもオルバン氏にはあったのでしょう。

ショルツ氏が「私たちはともに決定を下すべきだ。こうしたことを毎回すべきではない」と言っている通りですが、それでも「ごね得」が横行すればEUの価値も揺らぎます。事実上の機能不全に陥っている国連の安全保障理事会に比べると、よっぽどマシな気がします。

 

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