29日に亡くなったヘンリー・キッシンジャー氏。今朝の日経社説にも「キッシンジャー外交の光と影」とあるように、評価の分かれる人物です。
こと、日本からすると、それまでの対中政策を大幅に変更し、同盟国であるはずの日本を飛び越えて、1971年に極秘訪中。翌年の72年にニクソン大統領が訪中し、79年に国交正常化の道を開きました。寝耳に水だった日本も、その後に田中角栄首相が訪中し、正常化が順調に進んだからよかったものの、「手柄を取られた」とキッシンジャー氏は感じていたらしく、日本との相性はあまりよくありませんでした。
その後、アメリカは中国に対して支援を続けましたが、期待していた将来の民主化はとてもできそうになく、結果としては中国の台頭を早め、対立を強めた現在があります。
さらには、台湾問題も根深いです。大前研一さんが書かれている通り、1971年に当時の中華人民共和国(共産党)が国連に加盟し、安全保障理事会の常任理事国のメンバーになると、それまで常任理事国だった中華民国(国民党)は国連から追放されます。これは、ベトナム戦争終結のために中国の強力が必要になったため、当時のニクソン米大統領とキッシンジャー大統領補佐官が画策したといいます。これが、翌年のニクソン訪中、79年の国交正常化に繋がっていきます。
この時点で、アメリカが共産党政権と国民党政権の間に立って、2度と戦争をしないように和平協定を締結させ、ひとつの中国にすべきだったと大前さんは言います。この記事にはありませんが、この時点で台湾に逃れた国民党政権も国連加盟国として認めてあげていれば、今のように台湾が国として認められないようなことはなかったとも指摘されています。今では到底無理ですが、戦後すぐならアメリカと中国の力の差は歴然だったので、鄧小平氏も受け入れていたかもしれません。
中国は第2次世界大戦の戦勝国でしたが、当時の連合国側の中国代表は国民党政権で、カイロ会談に参加していたのは毛沢東ではなく、蒋介石です。日本が戦っていたのは、今の中国の共産党政権ではなく、国民党政権です。国連の常任理事国は、第2次世界大戦の戦勝国です。戦勝国ではない、中華人民共和国(共産党)を常任理事国にしたのは大失敗だったと思います(このロジックはロシアにも言えます)。
今からそれを言っても仕方ありません。敗戦国で立場の弱い日本はアメリカに従わないわけにはいきませんでしたし。じゃあ戦争から80年近く経った今なら、アメリカに正面からモノをいえるか?と言われると大変辛いところです…。