時事マラソン

世の中の動きに対するアンテナを高く保つ

「それでも中国が好きだ」台湾、知られざる素顔

「蔡は軍を掌握できていない」とはなかなか衝撃的で、「知られざる台湾」です。台湾統一を掲げる中国が実際に軍事侵攻したら...。日本も対岸の火事では済まない環境に置かれていますが、中国と向き合う台湾軍の事情は思ったよりも複雑、というよりも深刻です。

もともと台湾は中国がルーツ。1949年に国民党軍は共産党軍に敗れ、台湾に逃れました。中国大陸の奪還を誓ったが、夢に終わります。国民党軍は結局、台湾を守る「台湾軍」として衣替えを余儀なくされました。その屈辱が軍内に強く残り「我々こそは中国だ」と思っている。ここまではよく聞く話なので分かります。ただ、「我々こそ中国だと、今なお台湾独立に反対する教育が軍内で盛んだ」という軍事専門家の話は意外でした。我々こそは中国だ、だからこそ独立するんだ、だと思っていました。

台湾独立に反対する理由は、17万人を抱える台湾軍では将校などの幹部も依然、中国人を親などに持つ中国ルーツの「外省人」が牛耳る旧習が続くからです。歴代国防部長(大臣)も外省人がほぼ独占します。「そんな軍が有事で中国と戦えるはずがない。軍幹部の9割ほどは退役後、中国に渡る。軍の情報提供を見返りに金稼ぎし、腐敗が常態化している」と。米国が長年、台湾への武器売却や支援に慎重だったのも中国への情報流出を恐れたため、と言われれば至極納得します。

かつて台湾軍は国民党軍として中国で日本と戦いました。台湾有事を見据え今後、日台連携で中国対抗の絵を描いても「日本と距離を置くあの台湾軍が、いまさら日本と領土防衛で本当に協力できるのか」という軍事専門家のコメントを読むと、悩ましい気持ちになってしまいます。

 

www.nikkei.com