時事マラソン

世の中の動きに対するアンテナを高く保つ

国連の安保理改革に責任、日本ができること

世界の平和と秩序を保つために存在する国連、特に安全保障理事会が機能不全に陥っているのは周知の事実で、常任理事国以外のほぼすべての国連加盟国が、安保理改革が必要だと思っています。具体的な改革案について、外交の場面でたびたび登場するプロ中のプロ、北岡伸一教授が日経の経済教室に提言されていました。

安保理改革のポイントは2つ、「安保理の構成」と「拒否権」だと言います。

まず安保理の構成ですが、第二次世界大戦戦勝国で拒否権を持つアメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国の常任理事国5カ国と、拒否権を持たず任期2年で連続の再選不可の非常任理事国10カ国で構成されます。安保理改革が最も盛り上がったのが2005年。その前年に当時のアナン事務総長が任命したハイレベル委員会が2案を提示しました。

まずA案は、常任理事国を5→11カ国に、非常任理事国を10→13カ国とするもの。B案は、常任理事国数は5カ国のままだが、任期4年で再任を認める準常任理事国8カ国を新設、非常任理事国を10→11カ国とするというものです。

日本はドイツ、インド、ブラジルとG4を結成し、A案を基礎とした案を提出しました。当時の加盟国191のうち100以上の支持を得ていたが、可決に必要な加盟国の3分の2というハードルを超えられず、投票に至らず。その時より日本の国力は落ちており、G4案が通る見通しはほとんどないと北岡先生は言います。だが新たな常任理事国を選ぶことになれば、日本は依然として第一候補だと。ドイツには欧州から3つの常任理事国は不要との声があり、インドやブラジルに対しては周辺国から反対が強いといいます。日本に対しても韓国がたびたび難色を示してきましたが、今ならチャンスかもしれません。

北岡先生は、A案は諦め、B案を押してはどうかと言います。準常任理事国が8つできれば日本は間違いなく当選します。再選もできるとなれば、1回休んで再び出馬し当選すれば長く安保理にもいれます。

もうひとつの「拒否権」ですが、常任理事国の「特権」なので改革にはガードが固いです。国連憲章第27条は「安保理の決定は、常任理事国の同意投票を含む9理事国の賛成投票によって行われる」と定めます。これを例えば「常任理事国4カ国以上の賛成を含む」と変えるのである。「4か国」がミソで、つまり常任理事国1カ国だけでは拒否権が成立せず、2カ国が連携しなければ拒否権にならないという案です。中露が反対するというのがこれまでのパターンですが、中国も常に反対でなく、賛成はしなくても棄権ならありうると。中国も評判の悪い国と一体とみられるのは本意ではないでしょうから、たしかに妙案です。

国連安保理の機能不全を解消する具体策として、個人的には初めていいなと思える案を知ることができました。岸田首相がG7後にやるのは、憲法改正よりもこっちですね。

 

www.nikkei.com