時事マラソン

世の中の動きに対するアンテナを高く保つ

フランス少年射殺、暴動1週間 格差・分断を露呈

フランスで警官による少年射殺事件をめぐる暴動が始まって4日で1週間となります。

暴動は6月27日、警官が運転停止の指示に従わなかった17歳の少年を射殺したことで始まりました。少年はパリ郊外に住む北アフリカ系移民の出身。射殺された少年の母は事件後、息子が「アラブ人の顔つきをしていたから」撃たれたと発言し、人種差別が原因だと主張しています。

内務省によると、6晩目となる7月2日夜の拘束者は157人。1300人を超えた6月30日と比べると事態は鎮静化しつつあるようですが、パリ近郊の自治体の市長宅襲撃にまで発展した今回の暴動は、仏国内に大きな動揺をもたらしました。治安への懸念に加えて経済的損失も計り知れない。来年パリ五輪を控えているのでなおさらです。

それにしても、今回の暴動はフランスが抱える差別と格差という根深い問題を改めて露呈させました。パリやマルセイユといった大都市周辺には「バンリュー(郊外)」と呼ばれる地域が多く存在します。それらの地域の貧困率は平均43%、全国平均の15%を大きく上回ります。

マクロン氏にとっては、2018年に始まった黄色いベスト運動、23年前半の年金改革デモに続く内政危機。しょっちゅうあるなという印象です。

少し話題からそれますが、日本には死刑制度がありますが、フランスは1981年に廃止しています。死刑制度がある国は今では世界で少数派。マクロン大統領は、死刑廃止に向けて世界に働きかけています。しかし、今回のケースはまさにそうですが、フランスではいとも簡単に現場で射殺していしまいます。日本の感覚ではちょっとあり得ません。それも17歳の少年です。

「フランスの栄光をもう一度」とばかりに外に目を向けるのも分かりますが、自国の抱える闇も深刻です。

 

www.nikkei.com