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天皇陛下にインドネシア流おもてなし 「魚外交」絆深める

今回の天皇皇后両陛下のインドネシア訪問。ジョコ大統領は国賓として迎えたおふたりに数々のサプライズ演出でもてなしてくれました。大統領府関係者によると、ジョコ氏は両陛下を迎えるにあたって、上皇さまが過去2回、インドネシアを訪問された当時の記録を調べ上げたとのこと。

注目したのは「魚」でした。

上皇さまは1962年の皇太子時代に初代大統領スカルノとの会見のため訪れたボゴールの大統領宮殿で、池の見事なコイに感銘を受けられました。それを見たスカルノは日本にコイを贈呈。上皇さまは天皇即位後の91年に同国を再訪し、自らの発案で国産とインドネシア産のコイを掛け合わせて生まれたヒレナガニシキゴイ50匹を贈られました。インドネシアと、こんな魚のやりとりがあったとは知りませんでした。

このエピソードを知ったジョコ氏は両陛下を招待した大統領宮殿内の水槽で泳ぐ高級魚の「スーパーレッドアロワナ」を紹介しました。両陛下は興味を示し、皇后さまはジョコ氏に「ご自身で餌をやられるのですか」などと質問された様子は映像で見ました。ジョコ氏はアロワナをプレゼントする意向を天皇陛下に伝達。両陛下にも事務方にも一切知らせていないサプライズだったようです。体長60センチのアロワナの日本への輸送手続きを巡って両政府間で調整が続いています。

高級魚の一種のアロワナですが、インドネシアはポンティアナックという町に流れているカプアス川に生息していて、養殖もされています。私は2000年代初めにインドネシアで仕事をしていた時、しょっちゅうポンティアナックに行っていました。ポンティアナックは、首都ジャカルタがあるジャワ島ではなく、ジャワ島の北にある大きな島、カリマンタン島の西にあります。ここはちょうど赤道が通っていて、モニュメントも建っています。出張で行った時に泊まっていた定宿の巨大な水槽にアロワナが泳いでいました。おそらく1m近くあったと思います。こざっぱりした地味なホテルでしたが、アロワナの存在感は特別でした。

地曳さんが最後に書かれている通り、60年以上の時を経て皇室とインドネシアが紡いだ絆を着実に深められるかは、政治の手にかかっています。

 

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