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米国とインドは「呉越同舟」

インドの存在感が日に日に増してきました。今週22日には、インドのモディ首相が訪米、バイデン大統領から国賓待遇で招待されているそうです。モディ首相は、米議会の米議会の上下両院合同会議で複数回演説をする、数少ない外国の指導者のひとりになる予定で、これだけでも厚遇ぶりが伝わってきます。

ここにきてのインドの台頭は、偶然ではなく必然のことです。南アジアの大国であるインドは経済規模が世界第5位。2028年までには日本やインドを抜き去る予定です。インド出身の海外移住者は1800万人にも上り、その行先はアメリカから湾岸諸国にまで広がります。インドのソフトパワーはすさまじく、米国のアルファベット、IBMマイクロソフトの経営者は全員インド系で、米ビジネススクールのトップ5のうち、3校の長もインド系だそうです。アメリカ人の70%がインドを好意的に受け止めており、わずか15%の中国とは歴然です。

そんなインドとアメリカですが、摩擦の種もあると英エコノミストは言います。ひとつは、インドは西側諸国と実利的思惑で付き合っているだけで、イデオロギーの面では西側諸国に懐疑的であり、他国によってインドが支配されてきた歴史からも、西側が世界の主導権を握るという考え方は拒絶しています。武器を供給するロシアと近づくことを全く恐れません。

さらに、モディ氏は自由主義的な規範を攻撃しています。イスラム教徒への弾圧を強めており、キリスト教徒に対するリンチや財産収奪も横行しています。報道は脅威に屈し、法廷もほとんどが権力の言いなりです。インドは民主主義な国ですが、それは非自由主義的な民主主義です。全人口14億人のうち正規の職に就いている人はわずか6000万人。大衆は扇動されやすく、一触即発の状態です。アメリカは経済的に便宜を尽くした中国が結果的に敵対国になってしまったという歴史的な過ちをインドとの間で繰り返そうとしているという批判があるのも無理はありません。

中国からもロシアからもアメリカからも日本からもラブコールを受けるインド。嫌われるのはもちろん嫌ですが、あちこちから好かれるのもそれはそれで大変だなとも思います。

 

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