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日銀総裁なぜ辞退?雨宮副総裁の2つの信念

政府は日銀の黒田総裁の後任に、経済学者である植田和男元審議委員を指名する人事を固めたというニュースが先週広がりました。意外な人選だったようですが、新聞紙上などで本命として名前が挙がっていた、雨宮副総裁がなぜ政府の打診を固辞したのか、そこには植田氏起用にもつながる雨宮氏の2つの信念があったといいます。

① これまでの金融緩和策の点検と修正が自分ではできないから
日銀の時期体制は、これまでの長い金融緩和の点検と修正が求められるのに、当事者中の当事者だった自分が総裁になって、客観的な見直し作業ができるとは思えないと。

「長期緩和のすべてを知っているからこそ、その点検と修正もできるのでは」と政府関係者は説得し続けたようで、政府や市場関係者とのパイプも太い雨宮氏に期待するところは大きかったようですが、固辞されました。雨宮さんが総裁にでもなれば、点検と修正はこれまでの「否定」にも繋がりかねないので、周りの忖度とかも働きそうなのを、雨宮さん自身も分かっての判断だったかもしれません。

中央銀行のトップ人事の世界標準は、もはや内部昇格や官界からの登用ではないから
1990年代後半からの日銀のデフレとの闘いは、米国を中心とする主流派経済学者との闘いでもあり、「日本がデフレから脱却できないのは、日銀がインフレ目標も設定せず、大量の資金供給もしないからだ」などと手厳しい批判を浴びてきました。その主張は日本の政界の日銀批判に発展して、雨宮氏ら日銀執行部は深く苦悩することになります。

今では、FRBは後にノーベル経済学賞を受賞するバーナンキ氏や労働経済学者であるイエレン氏が起用され、ECBもドラギ前総裁は米MIT出身のエコノミスト。アジアを見ても同様で、中央銀行の首脳会議は単なる金融政策を語る場ではなく、複雑なマクロ経済分析を披露する場ですらあり、いわゆる「プロ」でないと話にならないということです。

雨宮氏の「世界的な経済学者を登用すべきだ」という一貫した主張から植田氏起用に繋がりました。ちなみに、植田氏のMIT留学時代の指導教官は、世界の中銀の理論的支柱でもあるフィッシャー氏で、バーナンキ氏もドラギ氏もフィッシャー氏の教え子だそうです。

黒田さんの後任はどう考えても大変な役目で、植田氏には頑張ってほしいとしかいいようがありません。雨宮氏の名前もよく覚えておきたいです。

 

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