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「愚か者」英国救った安全網 財政への信認、制度が守る

私と誕生日が同じ英トラス前首相があーもあっさり解任されたのは何故だったのか不思議に思っていたのですが、この記事でよくわかりました。


まずは一つの人事。英財務省のトム・スカラー氏がトラス前首相就任初日に解任されました。市場の信認が扱ったスカラー氏を「古めかしい価値観」を持つ人物だとして突如解任。中央銀行イングランド銀行についても「役割を見直す」と独立性を軽視する発言を繰り返しました。


極めつけが手続きの無視でした。英政府はリーマン・ショック時の反省を踏まえ、厳しさで定評のある独立財政機関から政策の達成状況や実効性についての分析を得た上で、経済・財政計画を発表してきました。しかし、トラス政権はこれを省略。通常のチェックを経ずに発表された計画に市場の疑心は膨らみ、10年物国債市場では英国の利回りが一時、イタリアを上回るまで急騰。英調査会社TSロンバードのダリオ・パーキンズ氏は上乗せ分を「(政府が招いた)愚か者リスクプレミアム」と名付け、一躍流行語になりました。


昨年秋の英国財政をめぐる混乱から4か月。財源の裏付けのない減税やエネルギー対策が引き金を引き、財政政策に規律をもたらす制度を軽んじるトラス氏の言動も混乱の大きな要因でした。英国が危機から脱するのを助けたのは、トラス政権が面倒くさがった制度の活用。今のスナク政権のハント財務相は、新財政計画を発表するまでの約1か月間で独立財政機関と10回以上やりとりをしてから発表しました。名付け親のパーキンズ氏は「独立財政機関などの制度が安全網になった」と評価し、英国の愚か者リスクプレミアムの大部分はなくなりました。


さてさて、世界最悪水準の財政状況にある日本が「愚か者」と市場から見放されることはあるのでしょうか。政府・与党に少なくともそんな危機感は感じられず、規模重視の大型補正予算がもう当たり前となっています。独立財政機関のような財政を監視する機能もあまりありません。個人的には、ちょっと怖いもの見たさもあるのですが…。

 

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