岸田首相が旧統一教会問題で一歩踏み込みました。宗教法人法に基づく「質問権」を行使した調査は前例がなく、所管する文化庁も「信教の自由」との兼ね合いもあり慎重でしたが、政権の苦境が首相の背中を押した格好になりました。
前例がないとのことで、オウム真理教の事件の時はなぜ適用されなかったんだろうと思いましたが、オウム真理教の事件を受けて1995年12月に宗教法人法が改正され、所轄庁が宗教法人へ「質問」し、業務に関して報告を要求できる権限を設けました。文科省の永岡大臣は「年内の早いうちに権限が行使できるよう手続きを進める」「調査途中でも解散命令を請求するに足る事実関係を把握した場合は速やかに請求する」と、鼻息も荒いです。
これまで政府は教団への調査に慎重でした。憲法にも謳われている「信教の自由」は当然に気にするところで、お世話になった旧統一教会にも遠慮するところもあっただろうし、創価学会という宗教団体がバックについている与党の公明党への忖度も多分にあったでしょう。しかし、河野消費者担当相が動いていました。8/10に入閣すると12日には霊感商法被害の有識者検討会設置を表明。29日には初会合を開くというさすがのスピードです。検討会の動きは逐一首相に報告されていたようで、「社会的に看過できない深刻な問題が指摘されている」という有識者検討会の提言を受け、初の質問権行使に動き出しました。
手順としてはなかなかいいと思います。うまくいけば、政権の支持率浮上にも繋がるかもしれませんし、不透明な宗教団体と政治の関係にも風穴があき、ひょっとしたらパンドラの箱を開けた決断になるかもしれません。政権にすり寄る怪しい団体はいくつもありそうですから…。