時事マラソン

世の中の動きに対するアンテナを高く保つ

そごう・西武のスト検討 セブンが見誤った百貨店消滅の危機感

セブン&アイHLDがが進めている百貨店子会社、そごう・西武の売却を巡り、そごう・西武労働組合ストライキの検討に入りました。今の時代に「スト」という言葉を久々に聞きました。

セブンが百貨店の売却先として、米投資ファンド・フォートレスと合意。そのフォートレスは、旗艦店の西武池袋本店の店舗経営を連携するヨドバシカメラに任せることに。しかし、西武百貨店の文化がなくなると一部の利害関係者が反発。このあたりまでは以前、この時事マラソンでも取り上げました。

その反発を受け、ヨドバシは池袋本店の低層階への入居を一部断念する検討に入りました。家電量販店の雄であるヨドバシ主導への転換は流れとしては変わらないにしても、西武としても厳しい事情があります。百貨店業界は旗艦店の販売力が仕入先にたいしてモノをいいます。池袋店の販売力・取引額があってこそ、地方店との取引にも応じます。旗艦店の池袋店が、ヨドバシで「占領」されては地方店にも影響を及ぼす。労組のスト検討の理由に繋がっていきます。

そこでおもしろいのが、今春から話題の小説「成瀬は天下を取りにいく」。2020年に閉店した西武大津店や大津市を舞台に風変わりな少女・成瀬がとっぴな行動で周囲を巻き込んでいく連作短編で、実に西武百貨店への愛にあふれているそうです。大津のある滋賀県西武グループ創始者の堤家の出身地でもあり、実際に大津西武の出身者は自社への愛着がとりわけ深いといいます。

小説の中に、大津出身の成瀬が池袋本店へ行くくだりがあります。池袋を見た成瀬は「本店はすごいな。もはやデパートというより街だな」とつぶやき、「わたしは将来、大津にデパートを建てようと思ってるんだ」と宣言します。

この小説も、そごう・西武のスト検討に一役買っているかもしれません。

 

www.nikkei.com