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双日、石炭なき「価値創造」の壁 解けぬPBR1倍方程式

各企業が「PBR1倍達成」に悪戦苦闘しています。

総合商社の双日はPBR(株価純資産倍率)1倍以上を目指し、7つの事業本部ごとに「価値創造ライン」の目標を掲げています。全事業本部がそろって達成できれば、ROE自己資本利益率)10%に相当するといいますが、それでもPBR1倍は遠いのが現状です。
2022年3月期は連結純利益が最高を更新。7事業本部の内、4本部が価値創造ラインを上回り、全体のROEは12.1%に上昇。今期は14.1%に伸びるとのことで、これ以上なく順調のように見えます。

ところが、狙い通りにROEが10%を上回っても、肝心のPBRは0.7倍前後で頭打ち。理論上の会社解散価値である1倍を大きく下回り、価値創造どころか株主価値を毀損しているとみなされる水準だ。ここが興味深いところなんですが、ROE上昇とは裏腹に利益の質をめぐる市場評価が下がっている、具体的には「石炭に依存した利益構造」の影響が大きいと記事では分析しています。22年4~12月期は純利益の3分の1を豪州の石炭権益を持つ会社で稼いでいます。石炭次第でROEの水準が変化する、「利益の質が低い」と投資家から判断されているようです。

もうひとつ面白いのが、PBRとROEとPER(株価収益率)の関係です。PBRはROEとPERに分解することができます。24日時点の双日のPERが5.4倍。上場企業の目安である15倍の3分の1位程度と収益が株価に反映されていません。PERが5.4倍のままだと、PBR1倍をキープしようとすれば、ROEを18.5%まで上げなければいけません。もし、ROEが今期の14.1%のままなら、PERを7.1倍にまで高めないと、PBR1倍にはなりません。

株価は16年ぶりの高値圏にあるにもかかわらず、PBR1倍に届かない双日CFOが「非常に遠い道のり」というコメントに本音がにじんでいます。

 

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