時事マラソン

世の中の動きに対するアンテナを高く保つ

孫興民が欧州名門リーグに問う「アジア系選手の真価」

イングランドのサッカー・プレミアリーグ。世界188か国の8億世帯以上で試合が視聴され、人気も収益も世界一のリーグです。昨年のサッカーW杯カタール大会以降、日本の三笘薫がブライトンで大活躍中ですが、アジアNo.1の選手は何といっても韓国の孫興民ソン・フンミン)です。孫は昨季に23ゴールをあげ、プレミアリーグの得点王のタイトルをアジア人で初めて獲得しました。

欧州チームにとって、アジサシ上は垂涎の的で、アジアのサッカーファンはすでに5億4650万人に達し、そのうちプレミアリーグのファンは3億8690万人と言われています。孫の所属するとトットナムのファンは韓国では1273万人おり、プレミアリーグのある英国の749万人を大きく上回ります。トットナムの公式サイトには韓国語版もあるそうです。そりゃそうでしょう(そういや最近、ブライトンのツイッターアカウントに日本語版ができました)。

そのアジア市場を獲得するために、アジア系選手は広告効果が第一、選手としての資質は二の次と言われてきました。それを実力で覆したのが、プレミアリーグの名門マンチェスター・ユナイテッドで200試合以上出場した朴智星パク・チソン)でした。その朴を上回る活躍を見せているのが同じ韓国人プレーヤーの孫というわけです。

その孫も、欧州の差別に直面していると記事にはあります。2/20のリーグ戦で試合を決定づけるゴールを決めたあと、数時間と立たずネット上に人種差別的な誹謗中傷が相次ぎました。決勝ゴールと誹謗中傷という2つの出来事は、世界を駆け巡るニュースの中で不自然な対称性を示しました。前者は孫のあふれる才能を、後者はアジア系選手が欧州で直面する試練を改めて世に知らしめたからです。

サッカーのトップ選手の華やかな一面だけを見ていたら本質を見誤ります。私たちの見えないところで、相当な苦労を抱え、メンタルを削りながらも自らを奮い立たせて、ピッチに向かっています。 

 

www.nikkei.com