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ソニーG新社長の十時裕樹氏 ロマンとそろばんを持つ熱血漢

ソニーの大きな人事が発表されました。

2日、十時裕樹副社長兼最高財務責任者CFO)が4/1付で社長兼最高執行責任者(COO)兼CFOに昇格する人事を発表。吉田憲一郎会長兼社長は代表権のある会長として最高経営責任者(CEO)も引き続き兼ねるとのことで、事実上の「2トップ体制」になります。世界的な景気後退懸念でテクノロジー業界に逆風が強まる中、十時氏の社長昇格で吉田氏との「2トップ」で経営体制を強固にし、電気自動車(EV)など成長領域の育成を急ぐとのことですが、思惑通りに2トップ体制が機能するかはわからないと別の記事にありました。コングロマリットソニーは過去にも同様に2トップ体制で経営に臨んだものの、つまづいた歴史があると。

出井氏が会長就任5年目の2000年に社長を安藤氏に譲り、自身は会長兼CEOになりましたが、後の著書でこの2トップ体制は「最大の失敗だった」と振り返りました。求心力が分散し、3つのDVD録音再生機を異なる部門が同時に商品化するなどトホホな迷走がありました。後任のストリンガー会長時代も中鉢氏が社長を務めましたが、1トップ体制に戻し、それでもソニーの浮上にもつながりませんでした。

そんなソニーの「2トップ黒歴史」はあるものの、この記事を読むと今回の2トップには期待が持てそうです。十時氏は、大企業のソニーにありながら、起業への思い入れが人一倍強く、金融機関の関係者は「右手にロマン、左手にそろばんを持ち、何かを組み合わせて面白い物をつくる絵を描くのがうまい」と評します。「いい物を『いい』と認めてくれる人」と、ソニーグループの誰もが前のめりで語りたがる憧れの存在との評です。

1987年にソニー入社後、自ら決断し本体から飛び出しました。ソニー銀行では創業メンバーの中心となり、ソネットに移ってからはエムスリーやDeNAなど今を時めく有望スタートアップを支援。大企業ではなく、「起業家」の血が流れている方のようです。
バトンを引き継ぐ吉田氏との年齢差は5つ。ふたりはソネット時代から腹蔵なく意見を言える関係のようです。ソニーソネットを完全子会社化することを決めた12年。自立経営を志向し、完全子会社化に反発した当時ソネット社長の吉田氏に「上場来高値を上回るTOBへの抵抗は株主に説明がつかない」と翻意を促しました。ソニーの平井前社長から復帰を要請された吉田氏が付けた条件のひとつは「十時も一緒に」だったとのことです。

テック企業の退潮が叫ばれる中、ソニーもEV車やメタバースなどで、一勝負もふた勝負もこれから仕掛けます。吉田氏の1トップよりも、吉田氏・十時氏の2トップの方がより成功に近づけるという判断なのでしょう。ソニーへの期待が大きく膨らむ人事です。

 

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