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日本電産の納入先を新天地に 関氏、鴻海でEV再挑戦

数日前に発表されたこの人事にも驚かされました。日本電産の社長を2022年に辞任した関潤氏が台湾の鴻海精密工業を再起の場として選びました。

関氏は日産の生産技術畑で副最高執行責任者を務めていた2020年に、永守会長から誘われ日電産の社長に就きました。EV駆動装置「イーアクスル」を含む車載事業を任され、21年には最高経営責任者となりましたが、車載事業などの「業績悪化の責任をとるため」(日電産)に22年に辞任して日本電産を去っていました。永守さんも関さんが退任した後の今年1月に、業績下方修正を発表した際には「外部から来られた方が好き放題の経営をして負の遺産を作った」と直接名前には言及しなかったが、関氏に対して厳しい発言をしていました。

普通、退職する際に同業者への転職は制限してそうなものですし、本人も遠慮するケースもありそうですが、永守さんは関さんに何の制限もつけず「お好きにどうぞ」としたんでしょうか。永守さんならやりそうですが…。

鴻海にとっては願ってもない人材です。iphoneなどスマホ組み立て依存からの脱却を狙う分野のひとつが電気自動車(EV)事業で、世界シェア5%の獲得を目指しています。EVの量産実績がまだないに等しい鴻海の経験不足を補うのに関氏は適任です。

鴻海と日本電産の関係も深く、鴻海がEV量産に向け、世界の部品メーカーなど2000社以上と協力するプラットフォーム「MIH」でも日本電産は主要メンバーです。21年3月にはイーアクスルの開発で戦略提携の覚書を交わし、同年7月には両社で合弁会社設立を検討していると発表。当時、日本電産社長だった関氏は「大量生産の安いEVが究極の姿」と、鴻海との関係強化を説いていたそうですが、その本人が相手先にいくというわけです。

売る方(日本電産)から買う方(鴻海)にいく関氏。どっちが強いとかはこのクラスの企業だとあまりないでしょうが、それでも買う方から売る方よりは若干いいかなと。売る側の事情が分かっているのはプラスに働きますし、逆に買う側に売る方の事情を知られているというのは何とも嫌な感じです。

日本電産では志半ばに終わった関さんですが、鴻海ではどうなるでしょうか。

 

www.nikkei.com