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東証は憎まれ役になれるか 低PBR撲滅

ある独立系運用会社のトップが、対話を持ち掛けてもナシのつぶてだった海外の投資家や企業などから、最高財務責任者が「会いたい」という依頼が相次いでいるそうです。日本の株式市場に興味や関心が湧いてきているからでしょうが、その変化のトリガーを引いたのは記事にもある通り、東京証券取引所です。

ひとつは、先日も取り上げた、基準未達企業の「経過措置の明確化」です。たとえば最上位のプライム市場だと、流通株式時価総額などの基準が未達の場合は3年で打ち切り、その後1年で改善できなければ上場廃止にすることを決めました。これにより、プライムに残留したければ、様々な企業努力が進みます。当然うまくいく企業とそうでない企業、あるいは諦める企業なども出てくるので、投資家としては選別がよりしやすくなる。しやすくなると、資金が日本のマーケットに入ってきます。

もうひとつのトリガーが「資本効率の引き上げ」です。PBR(株価純資産倍率)が1倍を下回るし品効率の低さを問題視しています。30日に公表した対応策の中でも、PBRが継続的に1倍を割る企業には改善を強く要請するとしています。

そもそもPBRが1倍を下回るのは、資本コスト(市場が求める最低リターン)を上回る自己資本利益率ROE)を上げていないからです。これらの企業は株主から預かった資本を毀損しており、事業を続けるより資産を処分して解散した方がいいことになる。すなわちPBR1倍割れは、市場から「上場失格」とみなされていることを意味します。実際、プライムの半数のPBRが1倍を割っています。PBR1倍割れのプライム企業は時価総額1000億円以上で292社、1兆円以上で47社(先週末時点)あります。

東証が、上場企業の反発に負けずに改革を迫る「憎まれ役」になれるかどうか。その覚悟が今問われています。

 

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