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人権問題、ピッチ外でも 「多様性示す帽子」巡り波紋

サッカーW杯の開催地カタールでの性的少数者や移民労働者の人権問題についての波紋がじわじわ広がっています。


ピッチ内では、性的少数者への差別撲滅を訴える「ワンラブ」と書いた腕章を欧州の7か国のキャプテンが着用してW杯に出場する予定でしたが、FIFAは着用した選手がイエローカードの対象になると警告され、ドイツ代表の主将のノイアーを始め、試合にはつけずに臨みました。そのかわりに、日本戦の試合開始前の写真撮影では、全員が口を手で隠すという何とも意味深なポーズをとりました。


21日にはウェールズのサポーターが会場で、性の多様性を示す虹色のバケット帽を脱ぐよう求められ、世界に波紋が広がりました。SNSでは対応を非難する投稿が相次ぎ、あえて虹色の帽子をかぶって観戦する人も現れたようです。ウェールズサッカー協会は、国際サッカー連盟に観客が虹色の帽子や旗を会場に持ち込めることを確認したとして「FIFAに対し全ての人が歓迎されるというメッセージを守り、人権問題を強調するよう要請する」と声明を出す事態となりました。


カタールの試合会場やホテルなどの建設には移民労働者が多く従事。人権団体のアムネスティ・インターナショナル日本は、2010~19年までに1万5千人が死亡したと報告しています。同国政府の統計は多くを「自然死」としているが、同団体は実際は熱中症などを要因とする労働関連死も多数含まれると指摘しています。同国の人口のうち、カタール人は10%ちょっと。大半が、海外からの出稼ぎ労働者が中心です。自国の開催国としての名誉を守るために、外国人労働者を犠牲にしているとしたら言語道断なことです。
大会組織委員会の広報担当者は「建設的な批判には向き合ってきたが、不公平なものが含まれている」としていますが、今は大会中なので戦っている選手のことを考えてもそれでもトーンは静かめですが、大会終了以降にいろいろと紛糾しそうです。

 

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