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兵役から復帰のボクシング・ロマチェンコ、戦禍の母国に勝利を届ける

これまでに五輪を連覇し、プロでも3階級を制覇。全階級で最高のボクサーを定めるパウンド・フォー・パウンドでの1位にランクされた、ウクライナの元最強ボクサーのワシル・ロマチェンコが兵役につき、機関銃を携えた軍服姿が今年2月下旬に報道されたことは多くのボクシングファンに衝撃を与えました。しかし、ロマチェンコにとっては当然の決断だったようで、「私の故郷で戦争が続いているんだ。家族と一緒に過ごし、仲間たちとともに母国を守らねばならなかった。ボクシングのことは考えない。未来のことも考えない。人生と家族を救うことだけを考えたんだ」と語ったと記事にはあります。


今年の5〜6月に一度は失った世界ライト級4団体統一王者への挑戦が内定していたにもかかわらず、ロマチェンコはその機会を棒に振ってまで母国防衛軍に加わりました。そんなロマチェンコが、今回軍隊を抜け、8月にトレーニングのために再渡米し、昨年12月以来、約11か月ぶりにリングに戻った理由も「ウクライナの人々の注意を少しだけスポーツに向けたかった」という故郷の人たちへのものでした。


そして、10/29に行われた復帰戦、相手は無敗のジャーメイン・オルティスという難敵でした。予想された以上の苦戦で、より大柄な相手のパンチを浴び、右目を腫らし、加齢と兵役の影響を感じさせましたが、「ロマ!ロマ!」の大声援を背に、終盤スタミナ負けをせず、手数と的確さでポイントを取り返し、最終的には3-0の判定勝ち。元王者の誇りと経験を見せてくれました。


今回の勝利を手土産に、母国に戻るロマチェンコ。ビッグマッチも予想されているものの、自身のコンディション、揺れ動く気持ち、そして今後の世界情勢も未知数な中、しかしどんな状況でもウクライナの人々はロマチェンコを応援し続けると思います。 

 

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