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強いEU、新たな国家連携像

欧州連合EU)は近年、相次ぐ緊急事態に直面してきました。欧州債務危機や移民危機、そしてブレグジット。さらには新型コロナウイルスの感染爆発で全域で経済が打撃を受けました。そして今、ロシアのウクライナ侵攻を背景に一段と大きな難民の波が再び欧州を襲い、エネルギー危機や新しい東西対立への懸念が生じています。スウェーデンやイタリアの選挙で極右政党が躍進し、EUの強さやレジリエンス(強じん性)が再び疑問視されており、EU不要論も一時叫ばれていましたが、EUは以前にも増して強くなっているとイアン・ブレマー氏は言います。


なぜかというと、EU創設者の一人、ジャン・モネの「欧州は危機を通じて形成され、危機に対する解決策を積み重ねて構築されていく」という言葉を取り上げ、それは正しかったと。危機だからこそ、EUは結束し、EUの一員である値打ちが出てくるということです。


欧州のパンデミック対策は、EU加盟国27か国で数千億ユーロ規模の復興基金創設に全会一致で合意しました。また、2021~27年の予算案も1兆740億ユーロ(約160兆円)で成立しました。加盟国であるからこそ、これらの恩恵を享受できます。EUに懐疑的なハンガリーのオルバン首相や先日首相についたばかりのイタリアのメローニ氏も、欧州委員会を無視することはできません。EUNATOとも密接に関係していますから、危険なロシアが近くにいる以上、NATOの防衛力も頼りになります。


今後も欧州の行く手には、歴史的課題が待ち受けていますが、それらは今後数年間かけて欧州が新たに手に入れた力を試すことになる。危機をばねに諸制度を強化するEUの力こそ、21世紀に成功する国家間連携の最高モデルだと、ブレマー氏は締めくくっています。自国だけでどうにかできる問題はとても少なくなっています。これからはどこと組むかがとても大事になってきます。

 

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