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「安倍氏と再び真剣勝負がしたかった」野田佳彦元首相が追討演説

立憲民主党の野田元首相が25日の衆院本会議で、自民党の安倍元首相への追悼演説に臨みました。追悼演説は、同じ政党に属する議員がすることも多いですが、党首クラスになると対立政党の党首が務めることが多いようで、今回は第95代内閣総理大臣の野田さんが、第96代内閣総理大臣の安倍さんに対して行いました。


Youtubeにアップされていたのを、倍速もせず約20分間じっくり耳を傾けましたが、さすが野田さん、名演説といっていい内容でした。対立政党、特に安倍さんと野田さんは国会などでバチバチやりあっていました。野田さんは当時の民主党3人目の首相で、前任の2人の体たらくを背負った野田さんと、政権返り咲きを目指す自民党の雄の安倍さん。そんなふたりにしか分からない感情が、野田さんの言葉で少し分かった気がしました。


いろんなメッセージが込められた演説でした。たとえば「国論が大きく分かれる重要課題は政府だけで決めるのではなく、国会で各党が関与した形で協議を進める」。権勢を誇った安倍氏ですら、天皇生前退位については話ができたんだから、岸田首相分かってるよね?ということでしょう。


それに、「不完全かもしれない民主主義」にも言及していました。国際的には独裁的が指導者が全体主義的に行う政治が目立っていて、民主主義が押され気味な昨今ですが、言論の力で良きものへと鍛え続けていこうというメッセージも刺さりました。民主主義の基は自由な言論だと。言いたいことが言えない、言ったら粛清され、罰せられる国が日本の近くにもあります。そういう日本も、だんだん言いたいことが言いにくい国になってきています。そんな野田さんの憂いを共感できます。


対立政党の立場からの追悼演説は、あらためて難しいなと思いました。故人の死を悼まないといけないけど、賛美ばかりでは対立政党から演説する意味がなくなってしまいます。そのあたりのバランスが非常に難しいですが、上手にされていたと思います。「あなたが放った強烈な光もその先に伸びた影も」はよかったですね。長く国家のかじ取りをしたからこそ、歴史の法廷に永遠に立ちづづけないといけない運命(さだめ)があると。功罪は問いますよ、でも長くやったからしょうがないですよ、観念してくださいね、と野田さんは言いたいような気もしました。


こういうグッとくる演説は、オバマ元大統領の広島での演説以来でした。野田さん、大役お疲れさまでした。

 

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