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インドネシア国際イスラム大学 民主主義との共存を探求

インドネシアで最も新しい国立大学として、昨年2021年に開学したインドネシア国際イスラム大学。

 

世界のイスラム教の信者がキリスト教信者を超える日も近い中、王族や宗教指導者らを中心とした権威主義が強いイスラム諸国が多いですが、イスラム教と民主主義を両立させようとするインドネシアの取り組みは珍しいです。ジョコ政権は、イスラム過激派の取り締まりを強める一方、人材育成にも取り組み、硬軟織り交ぜた対策を進めているひとつが、同大学の開学です。


キャンパスは首都ジャカルタから車で1時間ほどの西ジャワ州デポック。142ヘクタールと広大な土地を擁し、30%を校舎など建物で活用する以外は自然豊かな緑が覆います。今は、研究を中心にした大学院として修士と博士の過程を設けていますが、今後は学士を取得する一般の大学にも形態を広げるとのこと。穏健なイスラム教徒の育成を横串とし、インドネシア、中東、欧米の研究を幅広く取り混ぜ、イスラム教徒は無関係の授業も提供。授業は、すべて英語かアラビア語で、課程をクリアするのは容易ではないようです。


イスラム教の研究は中東が中心的な役割を担っており、人口2.7億人の内、9割がムスリムながら、本格的な研究を目指す人材はみな中東に留学していたようで、国内でのイスラム教育の強化は喫緊の課題でした。同大学が目指す穏健なイスラム教の普及は過激主義の根絶と表裏一体。2002年にリゾート地のバリ島で国内組織「ジェマ・イスラミア」のメンバーが引き起こしたテロでは200人以上が死亡し日本人も犠牲になりました。ちょうどその頃、私はインドネシアに駐在していました。バリ島でのテロの後、2003年8月にジャカルタ市内のホテルでも爆破テロがあったんですが、駐在が終わって帰国する3月にちょうど家族で泊まっていたホテルでもあり、911も含めて、数々の衝撃を受けました。


インドネシアの国是「パンチャシラ」は、初代スカルノ大統領が打ち出した5原則で、イスラム教以外の信仰を認めるほか、民主主義の尊重を掲げているなど、とても寛容な内容です。イスラム教のイメージを変えるよう、インドネシア国際イスラム大学の取り組みを応援したいです。

 

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