時事マラソン

世の中の動きに対するアンテナを高く保つ

ダイキン、中国部品使わずエアコン生産 有事に備え

ダイキン工業は、2023年度中に有事に中国製部品がなくてもエアコンを生産できるサプライチェーンを構築します。


これまで日本企業はコスト競争力の高い中国に生産拠点や部品調達先を集中させてきました。財務省によると、中国からの20年の輸入額は17兆円と全体の4分の1強の26%を占めます。特に家電製品や自動車の部品については中国への依存度は高く、ダイキンも10年代半ばから部品調達で中国への集中が進み、中国からの割合は20年には金額ベースで35%まで高まっていました。


ダイキンの部品調達比率は21年には20%まで引き下げましたが、今年に入ってゼロコロナ政策を受けた上海のロックダウンの影響で一部製品の生産が減少する事態も生じました。それ以外にも米中対立による供給途絶リスクや地政学リスクもあります。


ダイキンはただちに中国製部品をゼロにするのではありません。まずは、省エネなど中核機能に関わる部品を日本国内で内製化する。さらには、中国以外に工場を持つ取引先に生産を要請、中国にしか生産拠点を持たない取引先には、他国でも製造できるよう工場の新設を求めていく方針。平常時は中国から部品を調達する体制を維持しつつ、非常時には他地域からも調達できる体制を構築していくようです。


対中リスクを考えると、製造業の取るべき道のひとつのモデルになると思います。ただ、ダイキンの生産するエアコン空調の部品点数は約3000点と多いですが、それでも自動車の10分の1と少なく、まだサプライチェーンを構築しやすいと言います。自動車など、もっと部品点数が多い業界・企業はさらに大変になってきます。

 

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DMG森精機、最大級の太陽光 自家消費用で三重に

DMG森精機は、2025年、三重県伊賀市の拠点に、出力が1.3万キロワットと自家消費向けでは国内最大級になる太陽光発電設備を導入します。

 

同社は外部からCO2排出権や再生可能エネルギーで作られた電気を購入することなどにより、事業活動に伴うCO2排出をすでに実質ゼロにしていましたが、世界的な電力不足が深刻となることから、自前の再エネを増やして、かつコストを抑えながら「カーボンゼロ」を持続可能にする体制を整えていくようです。


今回は電力を購入する需要家の敷地や工場を活用し、発電事業者が発電設備を設ける「オンサイトPPA(電力購入契約)」と呼ぶ仕組みを使います。テス・エンジニアリング大阪市)が同事業所の屋根に順次設け、DMG森精機は電気を20年間買い取るほか、設置に必要な屋根の工事などに10億円強を投じていきます。


工作機械メーカーが再エネ導入を意欲的に進める背景には、顧客企業がサプライチェーン全体でCO2を減らし、脱炭素に取り組んでいる動きがあるからです。たとえば、米アップルは30年までに、供給網全体で排出量を実質ゼロにすることを目指しており、取引先であるDMGもやらなくっちゃということのようです。


どんな目的であっても、最終的にCO2排出量が減らされ、温室効果ガスの低減につながるのであれば、何でも構いません。どんどんやってほしいと思います。

 

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J1初の女性主審 山下良美さん

めちゃくちゃ小さい記事ですが、大きな一歩です。


昨日、雨中の国立競技場で行われたFC東京vs京都戦で、J1史上初めて女性審判が主審を務めました。文字通り、日本サッカー界の女性主審の先駆者でもある山下良美さん、36歳。


彼女が歩いた道はほぼ「史上初」がついてまわります。2021年5月にJ3の試合でJリーグ史上初の女性主審となり、2022年4月には、ACLアジアチャンピオンズリーグ)史上初の女性主審に。7月には、女性審判として初のプロレフェリー契約を結んだことが発表され、昨日のJ1デビューに繋がりました。


昨日のゲームは、副審は男性だったのが少し残念でしたが、女性だけで男子の試合の笛を吹くのも時間の問題でしょう。


そして、何といっても、今年11月にカタールで開催されるワールドカップの主審候補者36名に選ばれていることがすごいです。同大会は、W杯史上初めて主審3名、副審3名の6名の女性審判員が選ばれています。日本のJ1は昨日が初めてでしたが、ヨーロッパのリーグでは女性主審は既に笛を吹いています。しかし、W杯はまだいません。


36名は主審候補ですから、本大会で笛が吹けるかはまだ分かりません。これからふるいにかけられます。女性6名の内、何人が本大会のピッチに立てるのか?その中に、山下さんは含まれるのか?そして、女性主審として史上初めてW杯の笛を吹くことになれば、それはもう快挙です。


ちなみに、今大会、日本からは山下さんのみが審判団に名を連ねています。日本の男性主審候補者は選ばれていません。ということは、日本のレフェリーの代表として、ひとりでカタールに乗り込むことになります。


山下さんの感心するところは、何でもかんでも女性初と言われることは本意ではないけど、自分に注目が集まることによって、サッカーには選手やコーチだけではなく、審判員や運営スタッフなどいろいろな役割の人がいる、そういうところに目を向けてくれる人が少しでも増えたらいい、もっと女性審判も増えて欲しいし、プレーヤーも増えて欲しい、女子サッカーがより発展してほしいという気持ちがあると語っているところです。


カタール大会での日本代表の活躍ももちろん楽しみですが、山下主審の晴れ姿も楽しみにしています。

 

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エリザベス女王、チャーチルの教え守り政権の「相談役」

8日に亡くなった英国のエリザベス女王。約70年の在任期間中に15人の首相を任命しました。最後の15人目となったのが、亡くなる2日前に任命されたトラス新首相でした。エリザベス女王が過去の14人の首相にはできて、トラス氏にはできなかったことが「女王への情報報告」です。


英国の歴代の首相は毎週バッキンガム宮殿に出向いて女王に謁見し、女王に国内外の政治情勢を報告してきました。会話の中身は外には明かされません。1952年に即位した女王に最初に情勢を報告したのは、名宰相と呼ばれる故チャーチル首相です。英政府の資料によると80歳近かったチャーチル氏は最初の謁見で、20代の女王に「私は生涯の経験から女王に助言ができる」と語りかけたそうです。さらに彼女も重ねた年齢や経験を生かし首相に助言する時が来ると説きました。チャーチル氏は情勢報告で家庭教師のように法律や議会の慣習などを説明し、謁見は2時間に及ぶこともあったそうです。年齢はおじいちゃんと孫ですが、立場は女王と仕える首相。なかなか興味深い図式です。


女王は政治的中立が原則だが、内政・外交と無縁ではありません。チャーチル氏の言葉通り、その後は政権の陰の相談役を担いました。1990年まで11年の長期政権を築いた故サッチャー首相は後に「女王との面会を形式的とか儀礼だと想像するのは間違いだ」と述懐しました。国の方向性に少なからず関わっていたということでしょう。


1956年のスエズ動乱の時の経験が、1982年のフォークランド紛争時のサッチャー氏への助言に生き、イラク戦争を巡り批判を受けていたブッシュ米大統領には緩やかに擁護、今年3月のカナダ・トルドー首相の面会の際にはウクライナの国旗の色である黄色と青の花が飾られていました。


ジョンソン前首相が面会の感想で「女王はケネディ米大統領やインドのネルー初代首相まであらゆる人物を知ってる、歴史と政治に関する驚くべき権威だ」と言っていますが、もちろんリップサービスはあるものの、その言葉の説得力は半端ないと思います。


日本の皇室の模範のひとつとも言われている英王室ですが、日本もちょっとはこうなったらいいのになと思います。天皇陛下も皇后の雅子さまも見るからに賢そうで、勉強もされていそうで、私たち国民からの信頼も厚い。この何とも難しい「さりげない助言」ができる方たちだと思います。まあでも、日本では無理でしょうね…。

 

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旧統一教会問題招いた政治家の無関心 政治と宗教「共通善」目指せ

宗教にあまりに無関心な政治家が、教義や世界観にあまり頓着せず、選挙応援など実利面を評価して関係を結ぶ。宗教学者島薗進氏は、そうした姿勢が「社会的にさほどの支持も得られていない宗教団体が大きな影響力を持ち、国民生活にも累を及ぼす一因になった」と話し、この記事は始まっています。


自民党と旧統一教会は、教団が1968年に設立した反共産主義の政治組織『国際勝共連合』を軸に接近した。宗教団体としての実績がまだあまりないにもかかわらず、『反共』という点で一致しているから共闘できると考えたのはあまりに安易だった。教団はその後も合同結婚式霊感商法で批判を浴び、教祖の文鮮明氏も米国で脱税の実刑判決を受けた。にもかかわらず、92年には文氏が政治的判断で日本入国を許可されている。」


「2009年には教団の関連企業が霊感商法を巡って摘発された新世事件が起きている。旧統一教会の教えには、日本は特別の罪を負っているがゆえに、韓国あるいは教団の教祖に貢献しなくてはならないという内容が含まれている。選挙に協力してもらえるからというだけで、自民党の政治家がそのような教団と関係を持っていたのは、日本の政治史上の汚点だ」と。


宗教と政治が関わり合いを持つこと自体を否定しているわけではなく、共通善や望むべき社会のありかたについて考えを促すことにポジティブな面もあるとは言われるものの、あまりに安易につき合い過ぎた、脇の甘い対応だったと言わざるを得ません。本来ならば、安倍元首相の国葬とは分けて考えたいところではありますが、ここまでこじれてくると絡まった紐を解くのは容易ではありません。

 

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ヤクルト村上宗隆、圧巻の2発で王に並ぶ55号

ヤクルトの村上宗隆内野手が昨日、神宮球場で行われた巨人戦で1964年の王貞治に並ぶ日本選手シーズン最多の55号本塁打を放ちました。

 

ここのところ2試合ノーヒットが続き、前日はDeNAエスコバーの155キロを太ももにぶつけられ途中交代するなど心配していましたが、圧巻の2発。それも巨人のエースの菅野投手からとストッパーの大勢投手からの一発。見事でした。


王さんの55本との比較が神戸新聞に載っていましたが、王さんは55本の内、49本がライトスタンドへの打球ですが、村上選手はレフトスタンドからバックスクリーン、もちろんライトスタンドまで広角に放り込んでいます。先週、甲子園で52号を目撃しましたが、阪神のエースの青柳からバックスクリーン左の深いところに放り込んだ一発には度肝を抜かれました。阪神ファン一色のスタンドも「ちょっとすごいな、バケモンやな」と何とも言えない異様な雰囲気でした。


王さんの記録は1964年ですから、実に58年ぶりの到達で、あと残すところは、同じチーム・元ヤクルトのバレンティンの60本のみとなりました。自身の背番号に並び、あと5本。超えるためには6本。残り試合数が15試合。3試合に1本で5本。仮に王さんが60本なら、偉大な王さんの記録を抜くのは…なんて変な雰囲気にもなりそうですが、外国人のバレンティンなら日本人選手が抜いてくれと、ファンはもちろん、他チームの選手も少しは思っているかもです。

 

さらには、優勝争いが熾烈なら、勝負もシビアになりますが、ヤクルトはマジック11と優勝に向けて秒読み段階に入っています。ホームラン王のタイトル争いもあるなら、四球合戦も昔はありましたが、何せ2位の選手の倍以上打っていますから、その心配もなし。何なら中日ドラゴンズはチーム全体で59本と、村上選手と変わりません。


今シーズンのプロ野球完全試合ノーヒットノーランが続出し、投手の防御率が軒並みよく、3割打者が両リーグで数えるほどしかいない「投高打低」が顕著になっていますが、ひとり別次元の成績を残す村上選手。令和初の三冠王もほぼ手中に収めていると言ってよく、あとはシーズン本塁打記録の更新。ぜひ達成してほしいです!

 

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米国の難関ミネルバ大、日本を訪問地に追加検討

2014年秋開校から丸8年。全寮制で学生が世界7都市を移動しながら授業はすべてオンライン。各都市での実地課題解決学習を学ぶなど、ユニークな教育手法で知られる米国のミネルバ大学が学生数を3.5倍に増やすとともに、日本を訪問地に加えることを検討しているとのことです。


世界の7都市は、1年目がサンフランシスコ、2年目がソウルとハイデラバード、3年目がベルリンとブエノスアイレス、4年目がロンドンと台北で、1都市に半年から1年滞在し、授業を受けながら、企業でインターンシップなどもして過ごすそうで、その訪問地に日本を入れたいと、8月に来日したマギー学長が話しています。


訪問地を増やす理由としては、学部生の人数を現在の600人から2100人に増やす計画があるからで、規模の拡大とキャパの拡大を慎重に行いたいと。日本には厳しい定員規制がありますが、アメリカにはないので、これだけ大胆な拡大計画が可能です。合格率も1%と超難関なので、入学したい学生にとっても朗報でしょう。


マギー学長が今の高等教育機関についてどう思っているのかが、なかなか興味深いです。「従来の大学モデルは存続するし、研究に基礎を置く大学のモデルも間違いなくあり続ける。しかし、全ての教育機関は先に述べた学修成果を学生が身につけられるかどうかによって、ますます評価されるようになると強く確信している。その流れをミネルバは先導していく。」と言います。


より具体的に「問題を複数の文脈、領域、文化をまたいで明敏に分析できることや、容易でない挑戦を成功させる革新的な解決策を生み出すことが求められる。他者にビジョンを伝え、あることがなされないといけない理由を納得してもらったり、解決策を実装するために協働したりすることも必要だ。」とも。


これらを1都市ではなく、7都市で学べる。キャンパスが世界。自分が大学生ならぜひ学んでみたいですが、合格率の低さにさすがに躊躇してしまいます。

 

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国に仕えた無私の精神 エリザベス女王死去

英国のエリザベス女王がなくなったニュースは、安倍元首相が銃弾に倒れたニュースとはまた違った驚きがありました。


御年96歳。在位は何と70年余り。第二次世界大戦と現代との最後のつながりのひとつと記事にありますが、まさにその通りです。チャーチル首相と若かりし日のエリザベス女王の写真なんて、強烈に時代を感じます。私は50歳ですが、昭和天皇から数えて3人の天皇を知っていますが、英国の人たちの大半はほかの国王の時代を知りません。まさに、英国の象徴であり続けました。


先日、英国の新首相に選ばれたリズ・トラス氏を女王は任命していましたが、そのわずか数日後に亡くなったのはびっくりしました。首相任命はロンドンのバッキンガム宮殿で実施されるのが伝統ですが、医師団の進言で英北部スコットランドのバルモラル城でされたのは知りませんでした。


女王は歴代の首相と内閣の知恵袋として君臨、王室の試練も小柄な体で受け止め、国民からも愛されていました。申し分のない女王で、その政治感覚にほとんど狂いはなかったですが、例外は97年、チャールズ皇太子(当時)のダイアナ元妃が亡くなった際の対応だったと記事にあります。国民に広がる悲しみに、王室はなかなか反応しなかった。しびれをきらした当時のブレア首相が「国民のプリンセス」に哀悼の意を表し、王室はようやく後に続きました。


これも、ミスとか不誠実とかではなく、女王もひとりの人間なんだという人間臭さを感じさせるエピソードだと思います。それは、息子のチャールズ新国王に対してはもちろん、ダイアナ妃に対してもいろんな思いはあったでしょう。


国王も首相も変わった英国。エリザベス女王のご冥福を心からお祈りします。 

 

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自民半数に教団浸透 旧統一教会衆参議員調査

自民党が旧統一教会との接点調査結果を公表し、教団側の党内への浸透ぶりがあらわになりました。接点があった179人は同党議員の半数近くに及びます。安倍元首相の国葬と旧統一教会のダブルパンチを受けている岸田政権と自民党。幕引きを早くしたいでしょうが、とても終わりそうにありません。


179人は衆参両院議長を除く同党議員の47%に相当します。名前も関わり度合いも公表されていますが、誰がどうということも問題ですが、それ以上に問題なのが、旧統一教会自民党保守派にどう影響を及ぼしているかということです。このあたりの突っ込み具合がどうも弱く、神戸新聞はまだ触れているのでマシですが、日経は書かれてもいません。


統一教会の複数の関連団体は、憲法改正や選択的夫婦別姓反対を主張。「結婚は子どもを産み育てること」とLGBTQや同性婚にも不寛容。「家族」への異常なこだわりもあります。


ちきりんさんがツイートで、
統一教会自民党保守派は、
・男と女が結婚し、女は男の家の姓を名乗り、子供を産み育てるのが「まともな生き方」だと考えており、
共産主義国をぶっ潰すためには、憲法を改正して軍事力を増強することが我が国の最優先事項である、
という点で、完全に思想が一致してる。
と書かれています。


誰がどういう関係を旧統一教会と持っていたかよりも、日本が『選択的夫婦別姓』『同性婚』が遅れているところに、統一教会が政治に入り込んでいった影響があるんじゃないか?という方がよっぽど気持ち悪いし、明らかにして欲しいです。自民党保守派は旧統一教会以外にもバックに支援団体があります。男性が外で働いて、女性は家庭を守るといった旧来の家族形態を大事にする考え方が、女性進出が世界から大きく後れを取っている原因も、ここらにヒントがありそうです。

 

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IPEF14か国 半導体や医療物資融通、中国を念頭に

アメリカ主導の新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」の形が少しずつ見えてきました。バイデン大統領の提唱で5月に発足し、日米韓豪印、インドネシアシンガポールなどで構成されており、今日から2日間かけてロサンゼルスで対面による初の公式閣僚級会合が開かれます。


成果物となる声明には「供給網の危機管理メカニズム」構築という目標が盛り込まれるようで、具体的には有事の際に半導体や医療物資などの在庫を融通する体制づくりが検討されています。半導体などのほかには、感染症対応に不可欠な医療用防護服、レアアース、蓄電池なども念頭に置いています。


背景には、中国への警戒があります。2010年に尖閣諸島沖で中国漁船と海上保安庁の巡視船が衝突した後に、中国はレアアースを輸出規制しました。コロナ感染が拡大した当初は、マスクや防護服を中国製に依存していた国は物流の混乱で調達が難しくなりました。IPEFの参加国は重要な物資の生産にそれぞれ強みを持ち、半導体なら日米韓、レアアースは米豪印、医療用防護服はインドネシアの生産が多いとされます。


関税の引き下げや撤廃は行わず、分野ごとに参加できるサークルみたいな枠組みが今後どんなふうに発展していくか、まずは今日・明日の会合の結果を見たいです。

 

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インドネシア国際イスラム大学 民主主義との共存を探求

インドネシアで最も新しい国立大学として、昨年2021年に開学したインドネシア国際イスラム大学。

 

世界のイスラム教の信者がキリスト教信者を超える日も近い中、王族や宗教指導者らを中心とした権威主義が強いイスラム諸国が多いですが、イスラム教と民主主義を両立させようとするインドネシアの取り組みは珍しいです。ジョコ政権は、イスラム過激派の取り締まりを強める一方、人材育成にも取り組み、硬軟織り交ぜた対策を進めているひとつが、同大学の開学です。


キャンパスは首都ジャカルタから車で1時間ほどの西ジャワ州デポック。142ヘクタールと広大な土地を擁し、30%を校舎など建物で活用する以外は自然豊かな緑が覆います。今は、研究を中心にした大学院として修士と博士の過程を設けていますが、今後は学士を取得する一般の大学にも形態を広げるとのこと。穏健なイスラム教徒の育成を横串とし、インドネシア、中東、欧米の研究を幅広く取り混ぜ、イスラム教徒は無関係の授業も提供。授業は、すべて英語かアラビア語で、課程をクリアするのは容易ではないようです。


イスラム教の研究は中東が中心的な役割を担っており、人口2.7億人の内、9割がムスリムながら、本格的な研究を目指す人材はみな中東に留学していたようで、国内でのイスラム教育の強化は喫緊の課題でした。同大学が目指す穏健なイスラム教の普及は過激主義の根絶と表裏一体。2002年にリゾート地のバリ島で国内組織「ジェマ・イスラミア」のメンバーが引き起こしたテロでは200人以上が死亡し日本人も犠牲になりました。ちょうどその頃、私はインドネシアに駐在していました。バリ島でのテロの後、2003年8月にジャカルタ市内のホテルでも爆破テロがあったんですが、駐在が終わって帰国する3月にちょうど家族で泊まっていたホテルでもあり、911も含めて、数々の衝撃を受けました。


インドネシアの国是「パンチャシラ」は、初代スカルノ大統領が打ち出した5原則で、イスラム教以外の信仰を認めるほか、民主主義の尊重を掲げているなど、とても寛容な内容です。イスラム教のイメージを変えるよう、インドネシア国際イスラム大学の取り組みを応援したいです。

 

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英次期首相トラス氏、こんな人

英与党保守党は、ジョンソン首相の後任を選ぶ党首選の結果、リズ・トラス氏を新党首に選びました。今日、エリザベス女王の任命を受けて、正式に首相に就任します。


トラス氏は47歳。サッチャー氏、メイ氏に続く同国史上3人目の女性首相となります。当初、議員票で首位だったスナク氏の有利が伝えられましたが、財務相を辞任してジョンソン氏退陣のきっかけをつくったひとりとして嫌われ、一方外相を続投しジョンソン氏へ忠誠を誓ったトラス氏に徐々に傾いてきました。


トラス氏は、石油メジャー勤務などを経て2010年に政界入りし、わずか4年で環境相に抜擢。それ以降も複数の閣僚ポストで経験を重ね、2020年には国際貿易相として日英EPAの英側の交渉を主導。直近の外相だけでなく、財務相副大臣級のポストも歴任していいて、省庁の仕事についての内政・外政双方に精通しているとの評価が高いです。
一方、演説や討論での発言は機械的でぎこちなく、プレゼン力や親しみやすさには課題が残りますが、インスタやツイッターなどSNS発信は得意なようです。


トラス氏で気になる点はふたつあり、ひとつは私と誕生日が一緒なこと:くす玉:。年齢は3つ下ですが、自然と応援したくなります。もうひとつは、リバタリアン自由至上主義)の代表格だということ。私もリバタリアンの考え方は非常に好きで、現在は、リバタリアン的な考え方は劣勢で、物価高の対応などでどうしても大きな政府になりがちですが、そんな中減税をしながらどうやって財政規律を保つか、手腕を楽しみに見ています。

 

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日米「統合抑止」への変革 日本、台湾有事にらみ概算要求拡大

週をまたいで2回連続、日本の防衛費について今朝の朝刊1面の記事を取り上げます。
表題にもある「統合抑止(Integrated Deterrence)」は、日米で進む外交・安全保障戦略すり合わせのキーワードだそうで、今年5月の日米防衛省会談でオースティン国防長官が促し、事務方の交渉でもこの言葉が軸になっているようです。


意味としては、抑止力(Deterrence)を統合(Integrated)する。これまでの軍事力だけでなく、同盟国の能力、サイバーや宇宙の領域を幅広く活用していく。米軍単独では中国の脅威に対処できないという危機感が背景にあり、同盟国と連携を深め、補完し合う形で装備品を調達し、戦略や制度も見直さないといけない。今までのように、日本の防衛費の総額がいくらでGDP何%という数字ありきや、どんな整備品を購入するかという「買い物計画」ではない、もっと複雑で踏み込んだものになっていきそうです。


年末には国家安全保障戦略などの3つの政府文書が改定されるタイミングにも、間違いなく絡んでくるこの「統合抑止」です。


日米の間では、台湾有事の対応が何より懸案事項になります。アメリカは過去の条約の制約で現在中距離ミサイルは持っておらず、日本から中国に届く中距離ミサイルは日米ともに保有していません。対する中国は1250発以上持っていると言われており、「0対1250」という圧倒的な不均衡の修正が急務です。


装備だけでなく、インフラや制度、組織も日米がともに使えるようにしないといけません。特に組織は、日米の指揮系統が別々で、台湾有事に向けた「共同作戦計画」も、朝鮮半島有事のはあるけど台湾有事にはないと。

 

やることが山積みです。

 

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防衛論にまっとうな保守主義を

日本の防衛費についての記事です。日本の来年度の防衛予算は概算要求で過去最大の5兆5947億円。GDP比でちょうど1%ぐらいですが、補正予算の上積みが今年もありそうで、昨年が7700億円だったのでそれも足すと、6兆円は超えそう。そのくらいのボリュームです。


これを「日本もNATO並みにGDP比2%の防衛予算にするべき」という意見が多いですが、NATO基準でいけば自衛隊員の年金や海上保安庁の予算、国連平和維持活動(PKO)への拠出金も防衛費にカウントする必要があり、その場合、日本は既に約1.2%となるそうです。これらも含まず、補正予算も含まないで、単に防衛予算の「倍増を」との主張だと、2%を大きく超えてしまい、議論がおかしくなってしまいます。


ただ記事にもあるように、日本を取り巻く安全保障環境の変化を考えれば、防衛予算の増額は必要でしょう。問題は財源をどうするかです。防衛費を本当に10兆円程度に増やすのなら、消費税2%ぐらいの増税が必要になる。それが非現実的だとしたら、社会保障費に切り込めるのか。


政治家の人たちと私たち国民とのズレがあちこちに見られ、最近はそれが多くなっている気もします。そのズレのひとつが「国債」の使い方だと思います。国債は国の借金です。借金はできるだけしない方がいい。無駄使いはせず、収入に応じた支出を心がけるのは、生活を安定させるには当たり前の話です。なのに、政治家はすぐ国債、借金に頼ります。故安倍晋三氏は、「防衛費の増額は国債で対応していけばいい」と述べていました。防衛費の増額が無駄使いだとは思いませんが、借金が増え、国の財政赤字も膨らむとなると、ちょっと待ってと言いたくなります。


少子高齢化がさらに進むのに、社会保障費に切り込む、これまた難しい問題です。じゃあ、消費税の増税くらいしか方法はないんですが、これを政治家はやろうとしません。国民が反発し、支持率が下がり、次の自分の選挙に影響するからです。中国やロシアの財政政策はおよそ慎重かつ保守的で、それは彼らなりの愛国心の発露であると記事にありますが、さすが大機小機、皮肉が効いています。 

 

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冷戦終結の立役者 ゴルバチョフ元大統領死去

旧ソ連最後の最高指導者ミハイル・ゴルバチョフ氏が8/30、モスクワ市内の入院先で死去しました。91歳でした。


1985年に54歳の若さで最高指導者である共産党書記長に就任。立て直しと情報公開を意味するペレストロイカグラスノスチを掲げ、政治・経済改革を断行しました。東西冷戦という第2次世界大戦以降続いた世界秩序に終止符を打った最大の功績者であることは間違いありません。米国と軍拡競争を繰り広げ、覇権を追い求めていた戦略を転換。1989年12月にはブッシュ大統領(父)とともに和解を宣言。自ら歩み寄ることで、核戦争のリスクを摘んだことは賛辞に値すると社説にもあります。


旧ソ連は91年末までにロシアを含め15の国に分裂。東側陣営にいた東欧諸国はそれぞれ民主国家として独立し、東西ドイツは統一しました。英国のサッチャー首相(当時)に「一緒に仕事ができる人物」と言わしめ、日本でも「ゴルビー」と愛称で呼ばれ、人気を集めました。


しかし、誠に残念なことにロシア国内では人気が全くありませんでした。本人の意図に反してソ連は崩壊。誤算は、自らが動かした歴史の歯車が志向した枠を大きく超えて回転したことだと記事にはあります。急激な変化に国自体がついてこれず、官僚主義がはびこり、保守派の抵抗が氏の大きな障害になりました。ゴルバチョフ氏から権力を奪ったエリツィン氏とともに、新生ロシアはさらに経済的、社会的混乱に陥り、大国の地位を失いました。それを立て直すために登場したのが「ソ連崩壊は20世紀最大の地政学的悲劇」と位置付けるプーチン氏です。ソ連崩壊前後の混乱の反動が今の強権体制を招いたとするならば、産みの親はゴルバチョフ氏とも言える記事にありますが、「皮肉なことに」とは書いていますがなかなか厳しい意見です。


海外では評価が高いのに、国内ではそうでもない指導者は、ドイツのヘルムート・コール元首相を思い出しました。亡くなった安倍首相も、日本国内以上に海外で高く評価されているひとりかもしれません。国内からも海外からも評価が高い指導者というのは現れないものでしょうか…。


ご冥福をお祈りします。

 

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