時事マラソン

世の中の動きに対するアンテナを高く保つ

国に仕えた無私の精神 エリザベス女王死去

英国のエリザベス女王がなくなったニュースは、安倍元首相が銃弾に倒れたニュースとはまた違った驚きがありました。


御年96歳。在位は何と70年余り。第二次世界大戦と現代との最後のつながりのひとつと記事にありますが、まさにその通りです。チャーチル首相と若かりし日のエリザベス女王の写真なんて、強烈に時代を感じます。私は50歳ですが、昭和天皇から数えて3人の天皇を知っていますが、英国の人たちの大半はほかの国王の時代を知りません。まさに、英国の象徴であり続けました。


先日、英国の新首相に選ばれたリズ・トラス氏を女王は任命していましたが、そのわずか数日後に亡くなったのはびっくりしました。首相任命はロンドンのバッキンガム宮殿で実施されるのが伝統ですが、医師団の進言で英北部スコットランドのバルモラル城でされたのは知りませんでした。


女王は歴代の首相と内閣の知恵袋として君臨、王室の試練も小柄な体で受け止め、国民からも愛されていました。申し分のない女王で、その政治感覚にほとんど狂いはなかったですが、例外は97年、チャールズ皇太子(当時)のダイアナ元妃が亡くなった際の対応だったと記事にあります。国民に広がる悲しみに、王室はなかなか反応しなかった。しびれをきらした当時のブレア首相が「国民のプリンセス」に哀悼の意を表し、王室はようやく後に続きました。


これも、ミスとか不誠実とかではなく、女王もひとりの人間なんだという人間臭さを感じさせるエピソードだと思います。それは、息子のチャールズ新国王に対してはもちろん、ダイアナ妃に対してもいろんな思いはあったでしょう。


国王も首相も変わった英国。エリザベス女王のご冥福を心からお祈りします。 

 

www.nikkei.com

自民半数に教団浸透 旧統一教会衆参議員調査

自民党が旧統一教会との接点調査結果を公表し、教団側の党内への浸透ぶりがあらわになりました。接点があった179人は同党議員の半数近くに及びます。安倍元首相の国葬と旧統一教会のダブルパンチを受けている岸田政権と自民党。幕引きを早くしたいでしょうが、とても終わりそうにありません。


179人は衆参両院議長を除く同党議員の47%に相当します。名前も関わり度合いも公表されていますが、誰がどうということも問題ですが、それ以上に問題なのが、旧統一教会自民党保守派にどう影響を及ぼしているかということです。このあたりの突っ込み具合がどうも弱く、神戸新聞はまだ触れているのでマシですが、日経は書かれてもいません。


統一教会の複数の関連団体は、憲法改正や選択的夫婦別姓反対を主張。「結婚は子どもを産み育てること」とLGBTQや同性婚にも不寛容。「家族」への異常なこだわりもあります。


ちきりんさんがツイートで、
統一教会自民党保守派は、
・男と女が結婚し、女は男の家の姓を名乗り、子供を産み育てるのが「まともな生き方」だと考えており、
共産主義国をぶっ潰すためには、憲法を改正して軍事力を増強することが我が国の最優先事項である、
という点で、完全に思想が一致してる。
と書かれています。


誰がどういう関係を旧統一教会と持っていたかよりも、日本が『選択的夫婦別姓』『同性婚』が遅れているところに、統一教会が政治に入り込んでいった影響があるんじゃないか?という方がよっぽど気持ち悪いし、明らかにして欲しいです。自民党保守派は旧統一教会以外にもバックに支援団体があります。男性が外で働いて、女性は家庭を守るといった旧来の家族形態を大事にする考え方が、女性進出が世界から大きく後れを取っている原因も、ここらにヒントがありそうです。

 

www.kobe-np.co.jp

IPEF14か国 半導体や医療物資融通、中国を念頭に

アメリカ主導の新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」の形が少しずつ見えてきました。バイデン大統領の提唱で5月に発足し、日米韓豪印、インドネシアシンガポールなどで構成されており、今日から2日間かけてロサンゼルスで対面による初の公式閣僚級会合が開かれます。


成果物となる声明には「供給網の危機管理メカニズム」構築という目標が盛り込まれるようで、具体的には有事の際に半導体や医療物資などの在庫を融通する体制づくりが検討されています。半導体などのほかには、感染症対応に不可欠な医療用防護服、レアアース、蓄電池なども念頭に置いています。


背景には、中国への警戒があります。2010年に尖閣諸島沖で中国漁船と海上保安庁の巡視船が衝突した後に、中国はレアアースを輸出規制しました。コロナ感染が拡大した当初は、マスクや防護服を中国製に依存していた国は物流の混乱で調達が難しくなりました。IPEFの参加国は重要な物資の生産にそれぞれ強みを持ち、半導体なら日米韓、レアアースは米豪印、医療用防護服はインドネシアの生産が多いとされます。


関税の引き下げや撤廃は行わず、分野ごとに参加できるサークルみたいな枠組みが今後どんなふうに発展していくか、まずは今日・明日の会合の結果を見たいです。

 

www.nikkei.com

インドネシア国際イスラム大学 民主主義との共存を探求

インドネシアで最も新しい国立大学として、昨年2021年に開学したインドネシア国際イスラム大学。

 

世界のイスラム教の信者がキリスト教信者を超える日も近い中、王族や宗教指導者らを中心とした権威主義が強いイスラム諸国が多いですが、イスラム教と民主主義を両立させようとするインドネシアの取り組みは珍しいです。ジョコ政権は、イスラム過激派の取り締まりを強める一方、人材育成にも取り組み、硬軟織り交ぜた対策を進めているひとつが、同大学の開学です。


キャンパスは首都ジャカルタから車で1時間ほどの西ジャワ州デポック。142ヘクタールと広大な土地を擁し、30%を校舎など建物で活用する以外は自然豊かな緑が覆います。今は、研究を中心にした大学院として修士と博士の過程を設けていますが、今後は学士を取得する一般の大学にも形態を広げるとのこと。穏健なイスラム教徒の育成を横串とし、インドネシア、中東、欧米の研究を幅広く取り混ぜ、イスラム教徒は無関係の授業も提供。授業は、すべて英語かアラビア語で、課程をクリアするのは容易ではないようです。


イスラム教の研究は中東が中心的な役割を担っており、人口2.7億人の内、9割がムスリムながら、本格的な研究を目指す人材はみな中東に留学していたようで、国内でのイスラム教育の強化は喫緊の課題でした。同大学が目指す穏健なイスラム教の普及は過激主義の根絶と表裏一体。2002年にリゾート地のバリ島で国内組織「ジェマ・イスラミア」のメンバーが引き起こしたテロでは200人以上が死亡し日本人も犠牲になりました。ちょうどその頃、私はインドネシアに駐在していました。バリ島でのテロの後、2003年8月にジャカルタ市内のホテルでも爆破テロがあったんですが、駐在が終わって帰国する3月にちょうど家族で泊まっていたホテルでもあり、911も含めて、数々の衝撃を受けました。


インドネシアの国是「パンチャシラ」は、初代スカルノ大統領が打ち出した5原則で、イスラム教以外の信仰を認めるほか、民主主義の尊重を掲げているなど、とても寛容な内容です。イスラム教のイメージを変えるよう、インドネシア国際イスラム大学の取り組みを応援したいです。

 

www.nikkei.com

英次期首相トラス氏、こんな人

英与党保守党は、ジョンソン首相の後任を選ぶ党首選の結果、リズ・トラス氏を新党首に選びました。今日、エリザベス女王の任命を受けて、正式に首相に就任します。


トラス氏は47歳。サッチャー氏、メイ氏に続く同国史上3人目の女性首相となります。当初、議員票で首位だったスナク氏の有利が伝えられましたが、財務相を辞任してジョンソン氏退陣のきっかけをつくったひとりとして嫌われ、一方外相を続投しジョンソン氏へ忠誠を誓ったトラス氏に徐々に傾いてきました。


トラス氏は、石油メジャー勤務などを経て2010年に政界入りし、わずか4年で環境相に抜擢。それ以降も複数の閣僚ポストで経験を重ね、2020年には国際貿易相として日英EPAの英側の交渉を主導。直近の外相だけでなく、財務相副大臣級のポストも歴任していいて、省庁の仕事についての内政・外政双方に精通しているとの評価が高いです。
一方、演説や討論での発言は機械的でぎこちなく、プレゼン力や親しみやすさには課題が残りますが、インスタやツイッターなどSNS発信は得意なようです。


トラス氏で気になる点はふたつあり、ひとつは私と誕生日が一緒なこと:くす玉:。年齢は3つ下ですが、自然と応援したくなります。もうひとつは、リバタリアン自由至上主義)の代表格だということ。私もリバタリアンの考え方は非常に好きで、現在は、リバタリアン的な考え方は劣勢で、物価高の対応などでどうしても大きな政府になりがちですが、そんな中減税をしながらどうやって財政規律を保つか、手腕を楽しみに見ています。

 

www.nikkei.com

日米「統合抑止」への変革 日本、台湾有事にらみ概算要求拡大

週をまたいで2回連続、日本の防衛費について今朝の朝刊1面の記事を取り上げます。
表題にもある「統合抑止(Integrated Deterrence)」は、日米で進む外交・安全保障戦略すり合わせのキーワードだそうで、今年5月の日米防衛省会談でオースティン国防長官が促し、事務方の交渉でもこの言葉が軸になっているようです。


意味としては、抑止力(Deterrence)を統合(Integrated)する。これまでの軍事力だけでなく、同盟国の能力、サイバーや宇宙の領域を幅広く活用していく。米軍単独では中国の脅威に対処できないという危機感が背景にあり、同盟国と連携を深め、補完し合う形で装備品を調達し、戦略や制度も見直さないといけない。今までのように、日本の防衛費の総額がいくらでGDP何%という数字ありきや、どんな整備品を購入するかという「買い物計画」ではない、もっと複雑で踏み込んだものになっていきそうです。


年末には国家安全保障戦略などの3つの政府文書が改定されるタイミングにも、間違いなく絡んでくるこの「統合抑止」です。


日米の間では、台湾有事の対応が何より懸案事項になります。アメリカは過去の条約の制約で現在中距離ミサイルは持っておらず、日本から中国に届く中距離ミサイルは日米ともに保有していません。対する中国は1250発以上持っていると言われており、「0対1250」という圧倒的な不均衡の修正が急務です。


装備だけでなく、インフラや制度、組織も日米がともに使えるようにしないといけません。特に組織は、日米の指揮系統が別々で、台湾有事に向けた「共同作戦計画」も、朝鮮半島有事のはあるけど台湾有事にはないと。

 

やることが山積みです。

 

www.nikkei.com

防衛論にまっとうな保守主義を

日本の防衛費についての記事です。日本の来年度の防衛予算は概算要求で過去最大の5兆5947億円。GDP比でちょうど1%ぐらいですが、補正予算の上積みが今年もありそうで、昨年が7700億円だったのでそれも足すと、6兆円は超えそう。そのくらいのボリュームです。


これを「日本もNATO並みにGDP比2%の防衛予算にするべき」という意見が多いですが、NATO基準でいけば自衛隊員の年金や海上保安庁の予算、国連平和維持活動(PKO)への拠出金も防衛費にカウントする必要があり、その場合、日本は既に約1.2%となるそうです。これらも含まず、補正予算も含まないで、単に防衛予算の「倍増を」との主張だと、2%を大きく超えてしまい、議論がおかしくなってしまいます。


ただ記事にもあるように、日本を取り巻く安全保障環境の変化を考えれば、防衛予算の増額は必要でしょう。問題は財源をどうするかです。防衛費を本当に10兆円程度に増やすのなら、消費税2%ぐらいの増税が必要になる。それが非現実的だとしたら、社会保障費に切り込めるのか。


政治家の人たちと私たち国民とのズレがあちこちに見られ、最近はそれが多くなっている気もします。そのズレのひとつが「国債」の使い方だと思います。国債は国の借金です。借金はできるだけしない方がいい。無駄使いはせず、収入に応じた支出を心がけるのは、生活を安定させるには当たり前の話です。なのに、政治家はすぐ国債、借金に頼ります。故安倍晋三氏は、「防衛費の増額は国債で対応していけばいい」と述べていました。防衛費の増額が無駄使いだとは思いませんが、借金が増え、国の財政赤字も膨らむとなると、ちょっと待ってと言いたくなります。


少子高齢化がさらに進むのに、社会保障費に切り込む、これまた難しい問題です。じゃあ、消費税の増税くらいしか方法はないんですが、これを政治家はやろうとしません。国民が反発し、支持率が下がり、次の自分の選挙に影響するからです。中国やロシアの財政政策はおよそ慎重かつ保守的で、それは彼らなりの愛国心の発露であると記事にありますが、さすが大機小機、皮肉が効いています。 

 

www.nikkei.com

冷戦終結の立役者 ゴルバチョフ元大統領死去

旧ソ連最後の最高指導者ミハイル・ゴルバチョフ氏が8/30、モスクワ市内の入院先で死去しました。91歳でした。


1985年に54歳の若さで最高指導者である共産党書記長に就任。立て直しと情報公開を意味するペレストロイカグラスノスチを掲げ、政治・経済改革を断行しました。東西冷戦という第2次世界大戦以降続いた世界秩序に終止符を打った最大の功績者であることは間違いありません。米国と軍拡競争を繰り広げ、覇権を追い求めていた戦略を転換。1989年12月にはブッシュ大統領(父)とともに和解を宣言。自ら歩み寄ることで、核戦争のリスクを摘んだことは賛辞に値すると社説にもあります。


旧ソ連は91年末までにロシアを含め15の国に分裂。東側陣営にいた東欧諸国はそれぞれ民主国家として独立し、東西ドイツは統一しました。英国のサッチャー首相(当時)に「一緒に仕事ができる人物」と言わしめ、日本でも「ゴルビー」と愛称で呼ばれ、人気を集めました。


しかし、誠に残念なことにロシア国内では人気が全くありませんでした。本人の意図に反してソ連は崩壊。誤算は、自らが動かした歴史の歯車が志向した枠を大きく超えて回転したことだと記事にはあります。急激な変化に国自体がついてこれず、官僚主義がはびこり、保守派の抵抗が氏の大きな障害になりました。ゴルバチョフ氏から権力を奪ったエリツィン氏とともに、新生ロシアはさらに経済的、社会的混乱に陥り、大国の地位を失いました。それを立て直すために登場したのが「ソ連崩壊は20世紀最大の地政学的悲劇」と位置付けるプーチン氏です。ソ連崩壊前後の混乱の反動が今の強権体制を招いたとするならば、産みの親はゴルバチョフ氏とも言える記事にありますが、「皮肉なことに」とは書いていますがなかなか厳しい意見です。


海外では評価が高いのに、国内ではそうでもない指導者は、ドイツのヘルムート・コール元首相を思い出しました。亡くなった安倍首相も、日本国内以上に海外で高く評価されているひとりかもしれません。国内からも海外からも評価が高い指導者というのは現れないものでしょうか…。


ご冥福をお祈りします。

 

www.nikkei.com

稲盛和夫氏、独自の「アメーバ経営」 JALやKDDIで結実

京セラ創業者の稲盛和夫氏が24日、老衰のため亡くなりました。90歳でした。

 

鹿児島市出身で、会社員を経て1959年に京都セラミック(現在の京セラ)を創業。京セラの事業領域は電子部品、太陽電池事務機器などに広がり、連結売上高は2兆円に迫る大企業を作り上げました。このあたりは序の口というところが稲盛さんのすごいところで、1984年には第二電電の準備会社を設立。NTTが独占する市外電話や携帯電話などの事業に割って入り、2000年にKDDIを発足。NTTに次ぐ総合通信会社を作り上げました。


さらには、稲盛氏の生涯を貫くキーワードとして挙げられるのが「権威への反骨」で、自民党も好きではなく、「日本をよくするには政権交代が可能な国にすることが必要」との思いから、旧民主党を支援。その民主党所属で旧知の前原国土交通省からJALの再建を託され、2回断ったものの3回目で引き受け、2010年1月に経営破綻した会社を見事再建させました。


そこで持ち込まれたのが、「稲盛スペシャル」ともいうべき「アメーバ経営」。組織をアメーバのように小集団に分け、採算管理を徹底するこの手法をJALにも導入。「JALフィロソフィ」も発表し、経営や仕事に対する考え方を改革し、11年3月に更生手続きを終了、12年9月には再上場を果たしました。


アメーバ経営JALのような大企業だけではなく、稲盛氏自身が経営哲学を伝える「盛和塾」や多くの著作を通して、国内外の経営者に影響を与えました。20年以上前に私がサラリーマンをしていた時に、熊本の材木屋の社長が「うちはアメーバ経営をやってる」と言っていたのを今でも思い出します。組織を小集団に分けるということは、リーダーもそれだけ多くなる。小集団なので、ひとりひとりの役割が非常に重要になる。採算管理も徹底するので、責任も増す。どうやっても、主体的にやらざるを得なくなる。

 

今の自分の仕事は、ひとりでやっているので、アメーバ1つしかありませんが:ニヤ:、主宰するNPO法人などは、やりたい人にどんどんやってもらい、自分はゴールキーパーとしてゴールだけ守っている。稲盛さんのアメーバ経営は大好きな考え方で、常に意識しています。


記事にもありますが、昭和のカリスマ経営者が松下幸之助さんなら、平成のカリスマは間違いなく稲盛和夫さんです。


心からご冥福をお祈りしたいと思います。

 

www.nikkei.com

DMG森精機、創業地・奈良「技の総本山」

今関西では、奈良がアツいです。


工作機械世界最大手のDMG森精機が、創業地である奈良県で拠点の拡充や新設を進めています。このほど奈良市内の開発拠点を本格稼働し、ロボットや自動搬送装置などと組み合わせて複数工程を集約する技術開発を加速。グループ企業の工場なども2025年にかけて整備し、900人程度を雇用する方針です。


現在同社は、名古屋市から本社を同拠点に移し、東京都江東区との2本社制をとっており、総務や経理などの人材も奈良で働いています。森社長自身も高校まで奈良県で過ごし、登記上の本社所在地は奈良県大和郡山市に残すなど、奈良への思い入れは格別です。


DMG奈良県内に設けるのは、本社機能や開発拠点だけではありません。大和郡山市にある奈良事業所は、自動化など顧客ごとのソリューションを作り上げ、調整・検証する拠点として25年をめどに再整備する予定。工作機械をロボットなど周辺機器と組み合わせた工程集約に向けた自動化などの拠点が集まる奈良は、「エンジニアの総本山」(森社長)という役割を担います。


DMG森精機の「奈良回帰」。新拠点による人材交流などに、地元の期待はいやがおうにも膨らみます。開発センタの立地はJR奈良駅から100メートルも離れていない好立地。大阪や京都からも近いです。JR奈良駅から南へ1.8キロメートル離れたエリアでは、JR関西本線の新駅設置や京奈和自動車道(大和北道路)奈良インターチェンジの整備の計画があります。県内で唯一、ICと新駅が近接する交通結節点です。「おおむね10年後」の開業を目指す新駅を中心に、人工知能(AI)などを活用する企業などを誘致する計画で、その中心を同社が担うのは間違いありません。


同社は大学との連携も進めていて、今春、女子大学としては初の工学部を開設した奈良女子大学と連携協定を結び、拠点内に学生のための実習エリアを設けるなど、人材育成にも抜かりがありません。


人材育成というと、今年のショパン国際ピアノコンクールで2位になった気鋭のピアニスト、反田恭平氏と共同で、音楽家の活躍の場創出を目的とする新会社も設立。奈良県を拠点にオーケストラの公演や音源作成・配信などの事業を展開するなど、企業メセナもしっかり押さえています。


今後の奈良とDMG森精機には大きな期待がかかります。

 

www.nikkei.com

TICAD、対中国の舞台 岸田首相「成長の質」協調

チュニジアの首都チュニスで27、28両日に開催したアフリカ開発会議(TICAD8)が終了、日本が中国へ対抗する舞台となりました。

 

岸田首相が表明した支援額は3年間で官民あわせて300億ドルと、中国が21年の中国・アフリカ協力フォーラムで示した400億ドルを下回りました。資金力にものをいわせて援助攻勢をかける中国に対し、日本は人材教育や財政状況に目配りする「持続可能な成長」を強調しました。


日本はTICADを他国に先駆けて1993年に始めたアフリカ開発の老舗で、今回が通算8回目の会合。一時は世界最大のアフリカ援助国でしたが、中国が2000年に、中国・アフリカ協力フォーラムをスタート。今や日本の役割は中国の陰に隠れています。


今回の会議ですが、支持率低迷の打開策として、自身も得意という外交でのアピールを目論んだ岸田首相がコロナに感染。オンライン参加となりました。そのかわりに、林外相を首相特使に任命し、岸田首相と協力しながら各国との「マラソン会談」に臨んだものの、アフリカ諸国は代表団トップを首脳級から格下げした国も多く、参加48か国のうち、首脳級の出席は前回の19年の横浜会議の42人の半分に満たない20人にとどまるなど、TICAD自体の尻すぼみ感が拭えません。


ただ、日本の34社・団体が脱炭素やインフラなどで協力する92本の覚書をアフリカ側と交わすなど、日本の得意分野での開発協力が進んでいくとすれば、これはこれでとてもいいことだと思います。グロスで何億ドルをドーンというよりも、ひとつひとつのプロジェクトをコツコツ積み上げていく方が、お互いに信頼関係を築くにはいいと思います。量より質です。

 

www.nikkei.com

日本電産、「ポスト永守」リスク増す 関社長が退社へ

えーっつ?という気持ちと、やっぱり…という気持ちの半々でした。


日本電産の社長兼最高執行責任者(COO)である関潤氏の退任方針が25日、明らかになりました。日産自動車で副COOを務めていた関氏が20年1月に入社。4月からは社長になり、「即断即決、トップダウン、人格、どれをとってもCEOの後継者にふさわしい」と、21年に永守会長からCEOを任されました。


しかし、業績と株価が低迷すると永守氏の関氏への評価が変わりました。21年6月に12000円だった株価は22年4月には8000円台に落ち込みました。さらには、22年3月期の決算で連結純利益が過去最高を更新したものの、関氏が担当する車載事業が営業赤字となり、22年4月からはCEOからCOOへの事実上の降格となりました。


6月の時点では、関氏は「逃げる気は全くない」とファイティングポーズをとり、永守氏も「逃げない限りはCEOの後継者として育てる」としていましたが、22年4月~6月期に車載事業が四半期ベースで2期連続営業赤字に。ひょっとしたら、ラストチャンスは与えるが、4~6月期の営業黒字は必達と厳命していたのかもしれません。


永守会長はまもなく78歳になりますが、過去に社外からヘッドハンティングをして自身の後継候補としてきました。カルソニックカンセイ元社長の呉氏、元シャープ社長の片山氏、元日産の吉本氏、そして今回の関氏も落第となってしまいました。


記事の中で気になる点としては、企業統治指針(コーポレートガバナンスコード)では、後継者の計画は社外取締役を中心に指名委員会を設置して助言を得るべきだとしていますが、日本電産には指名委員会を設けていないようです。「自分の後継者は自分で決める」ということなんでしょうか。

 

私は株主でもありませんし、部外者がいろいろ言うべきではないのかもしれませんが、日本を代表する経営者でも自分の後継者を選ぶのは本当に難しい、気になる事案であることは間違いないです。

 

www.nikkei.com

公明党、反撃能力は「日本へ攻撃後」抑止力強化に懸念

国の安全保障戦略の改定に向け、動き出しています。日米同盟で攻撃能力はほぼアメリカに依存してきましたが、他国がアメリカの軍事的な介入意欲が低いと思い込めば、日本を安心して攻撃できる状況が生まれます。それでは困るということで、政権与党の間で制度設計を詰めています。


まず政府は「相手が武力攻撃に着手した時で、現実の被害の発生を待たなければならないものではない」との見解を提示しています。相手の攻撃準備が分かれば、相手が攻撃する前に叩いてもいいということです。自民党は「相手側に明確な意図があり攻撃に着手している状況なら、それを脅威と政府が判断する」ということで賛成の立場です。


一方、公明党は慎重です。「ミサイルが発射されるのが前提にならざるを得ないのではないか。日本への武力攻撃開始が大前提だ」と、実際に攻撃を受けた後に反撃するものという考えのようです。これに対し、自民党内には、日本が撃たれる前に攻撃をしないといった方針を明確にすれば、相手への抑止力が弱まる恐れがあるとの指摘もあり、なかなか難しいです。


さらには、反撃・攻撃する対象の協議事項となっていて、ミサイル基地だけでなく、相手の指揮統制機能も含むべき、いやもっと広げてミサイルの発射拠点や保管庫も対象にすべき?など意見はさまざまです。


反撃対象の範囲までは何とも言えませんが、個人的には攻撃されるのはできるものならやられる前に叩いてほしい。しかし、記事にもあるように相手の発射前に武力攻撃に着手したと判断できるのか、分かるもんだろうかとは思います。発射拠点を分かりにくくする技術も開発されると思います。じゃあ、攻撃を受けた後に…では、確かにやられないとやりかえせないでは抑止力は弱まる。このあたりは、もう少し議論のゆくえを見守りたいと思います。

 

www.nikkei.com

共通テスト、12月に前倒し実施を

日本私立大学連盟(私大連)会長を務める田中愛治早稲田大総長が、大学入学共通テストの実施時期を12月に前倒しして、私立大が利用しやすくすべきだと提言しているという記事を取り上げます。


なぜかというと、文系と理系の融合にまずは入試を対応させたいという考えからです。
国立大では文系なら理系科目、理系なら文系科目は若干力を抜いてもいいよ、となる。でも私立大の場合は力を抜くのではなく全くやらない。しかし、私立大の文系学部が理系科目の問題を、理系学部が文系科目を出題するのは大変。それなら大学入学共通テストを使えばいいと。1次試験は「共通テスト」を利用して幅広く基礎学力を見たうえで、2次試験は大学独自の「個別試験」で本当に欲しい学生を丁寧に選んだらいいのではと、田中会長は言います。


ここで問題になってくるのが、共通テストの実施時期です。実施が1月中旬では、大学に志望者の成績が届くのは早くて2/7あたり。入試時期が早い関西の大学は終わっています。関東でも多くが2月初旬から始めるので、共通テストを1次試験に使うのは不可能です。しかし、11月下旬か12月に共通テストを行えば、1月半ばに結果が出るので、私立大も十分に1次試験として使えると。共通テストならどの科目も自由に課せられるため、それが文理融合、文理の壁を崩すのに役に立つというのが田中会長のロジックです。


ここまで読んで、来年からでもやったら?と、とてもいいアイディアだと思いました。記事に、アメリカの例が紹介されていますが、共通テストで基礎学力が問題ないことが分かれば、大学独自の個別試験では、個々の特性や過去の活動実績、面談、プレゼン、小論文など、知識を問う筆記試験ではない、スクールカラーを反映させた選抜方法を問うのも一考です。


前倒し実現の障害として「授業が終わらない、秋は学校行事で忙しい」との理由で高校が反対しているようですが、田中会長が最後に書かれている通り、高校側の本音はこれまでの慣習や現状を変えたくないからだと思うので、そこは文科省がリーダーシップをとるべきところだと思います。

 

www.nikkei.com

中国・太陽光メーカー、投資競争過熱 原発340基分新設

これほどまでになっているんだと大変驚きました。中国の太陽光発電メーカー各社が増産投資を競っています。カーボンニュートラル(温暖化ガスの排出実質ゼロ)を宣言した中国・国内外の需要増に加え、これまではコスト競争力に優れるp型のセルが主流だったのが、発電効率の高いn型が低価格で供給できるようになったことも大きいようです。


以前は、日本のメーカーも太陽光発電パネルを製造していましたが、今では見る影もなく、世界の生産シェアの何と8割超を中国メーカーが占めます。8割とはすごいです。その源泉は、規模を重視した投資と生産量です。現在、世界の太陽光発電の新設量は、原子力発電所340基新設するのに等しい規模にのぼるというのですから、これまた驚きです。しかも、この340基は「年単位」だと。この数量、すなわち新設分だけで21年の発電能力を超えるというのですから、桁違いの生産量です。


中国企業の激しい投資競争は、供給増を通じて太陽光パネルの価格を世界的に押し下げます。太陽光発電は、長期的な需要増は確実だとはいえ、激しい投資競争は各社の体力を消耗させます。日本のように、経営難の業界や企業に補助金などを出して、ゾンビ企業を創出するようなことを中国はしません。特にこの分野での値下げ圧力は、経済面での米中対立で、習近平指導部を側面支援する可能性も指摘されます。アメリカは、国内への投資回帰を促すため、中国製の太陽光パネルの輸入はゼロにしています。このままなら、おそらくコストの高いパネルをアメリカ国内で消費者は使い続けることになります。基本的に、太陽光発電装置産業で、つくればつくるほど安くなります。ますます中国産は安くなっていくでしょう。


勝ち残らないと生き残れない。当然、イノベーションやコストダウンに各社とも必死になります。いい悪いは別にして、中国の破壊力をまざまざと見せつけられます。

 

www.nikkei.com